石原新さんが歩む21世紀型日本人ビジネスマンへの道

第5回
やってみてから・・・

交渉は、私の焦りにはお構いなしにどんどん進んでいきます。
「何しに来た?」といわれていた私は、
とにかく何か言わなければいけない、言わなければ・・・
という気持ちが空回りしていました。

センサーテック社は、
「撤退を表明してからかなり時間が経っているため、
もし今回の交渉がうまくいかなければ、
資産はスクラップにするしかない」
と話しました。
また、
「日本の会社は意思決定に時間がかかることが多いが、
オグラ技研はオグラ社長のリーダーシップもあり動きが速い」
と我々を持ち上げました。
これは、今から考えると、
「これが店じまい前の最後のお買い得セールですよ〜、
買わないと損しますよ旦那〜」
と、我々に心理的な脅迫観念を与える手段でした。

しかし、当時の私にはそうした行間を読む力がなく、
ただおぼろげな不安感を
どうにかしてオグラ社長に伝える方法を探していました。

「社長、今回の案件、
当初我々が考えていた条件からどんどん離れていっているようです。
買収提示額からみて、
回収のリスクが大きくなってきていると思いますが…」

「それはわかっとる。
では、どうすればその回収リスクが小さくできるか、
交渉の落としどころを考えるのが事務方の役目だろうが!」

「IPやソフトウェアの問題もありますし、
リスクを考えて慎重な判断をされたほうが・・・」

「評論家はいらないんだよ、評論家はッ! 
反対なら代案をだしてくれよ、代案を!」


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