至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第123回
暑い国から来たサングリア

この原稿に向き合っている現在、気温32℃。
風が無く、音も無い、何も動かない白昼です。
ビールビールと書いてきましたが
ここで頭を切り替えて
暑い国の、暑さをしのぐ、ビール以外のお酒について。
あまり切り替わってない……?

スペインの、サングリア。
フルーツを漬けた
赤ワインベースのカクテルです。
ずっと長いこと私はそれを
おんな子どもの甘い飲み物だと誤解しておりました。

汗でシャツが肌にはりついていた仕事帰りに
突然思い出した呪文の言葉。
「暑いこの頃、自家製サングリアが最高です」
あるバーが、常連に向けて配信する
お知らせメールの一文です。
しかもそれは去年の話で
一年後に魔法にかかってしまったという……。

10分後
カウンターのいちばん隅で
ゴクゴクと流し込んだサングリアは
甘みはあっても甘くない
むしろスパイシーな、大人の味。
フルーツのフレッシュな香りと
ハーブ・スパイス系のパンチの効いた香りが
幾重にも重なって
なんとも複雑な余韻を残します。
……変わってる。
思わず呟いてしまった私に
ニヤリと微笑む店主。

その店のレシピを、私は知りませんが
ベースの赤ワインには
ブランデーやコワントロー、ラムなどを加える人もいますし
漬けるフルーツも
オレンジ、レモン、ライムだけでなく
桃、さくらんぼ、洋梨、キウイ、バナナ、リンゴと
なんでもお好みでOK。
それにシナモンスティックを基本に
ナツメグ、クローブなどのスパイスや、
ミント、ローズマリーなどのハーブを入れたり。
で、甘いのが好きな人は
シロップや蜂蜜を加えたりするようです。

つまりサングリアのレシピは無限にあって
変わってるのが普通なのです。

おいしいというか個性的というかクセになるというか……。
ぐるぐる考えているうちに
気づけばお隣も
「やっぱりここに来たらこれだよね」
と言いながら、サングリアを飲んでいます。
しかしお隣の連れは
この普通に変わってる飲み物がお口に合わないようで
「私は違うのがいい」
と一蹴。
お隣は
信じられない、といった丸い目をこちらへ向けて言いました。
「なんでわかんないかなぁ、ねぇ?」

はたして私は
わかっているのか、いないのか。


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2004年6月9日(水)

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