至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第81回
最近、フランス料理食べました?

今、イタリア料理を勉強しているコックでも
最初は
フランス料理の洗礼を受けていた者が、少なからずいます。
何しろ1980年代以前は、フランス料理全盛の時代。
ご馳走と言えばフランス料理のことで
ホテルのメインダイニングも概ねそれでした。

だんだんイタリアの文化そのものが
日本で知られるようになり、イタメシブームも手伝って
イタリア料理が急速に浸透。
ニーズが増えれば店も増え、コックも増えるという
雪だるま式になっていますが
しかしそれはここ十数年の話です。

料理の王道=フランス料理という図式は
イタリアで修業している若いコック達の中にも
たしかにありました。
それでもイタリアを目指した人達の声を訊いてみると
フランス料理は
「(厨房の)上下関係が理不尽に厳しい」
「味が複雑で、おいしいと思えない」
「重い、楽しくない」
また
「フランスだイタリアだと分けずに、
いろんな要素を自分の中に取り入れたい」
と考える者もいました。

でも、何と言ってもいちばん多かったのは
「食べる方も作る側もお金がかかる」
という意見です。
客はクラシック音楽の流れるレストランで
きちんと正装して、がっちり決められたフルコースを
気張って食べる。
店は、格式高い雰囲気を演出するインテリアや食器、
第一、食材にも経費をかけなければいけない。
良くも悪くも
それが王道たる料理のイメージでした。

かくいう私もそうでしたが、でも今
必ずしもそうだとは限らないと思い始めています。

フランス料理でも
「食堂」に近い雰囲気のビストロはもちろん、
スタンディングでしっかりした料理が食べられる店や
普段着で行ける街のレストランなども
メキメキ出現しています。
逆に、今までの敷居の高さが特別枠なのであって
それも確かにあるのですが
もっと他の
フランスの普通の人達が、普段から楽しむような
お店もあるんだということに
気づき始めてきたという気がするのです。

以前、フランスのブルゴーニュにひとり旅をしました。
ディジョンという、マスタードが有名な街から
ブルゴーニュワインの生産地区である
コート・ドール(黄金の丘)を
バスと徒歩で、てくてくと。
その時泊まったボーヌという小さな街は
まさに世界中のワイン好きが憧れる、ワインの聖地ですが
人も料理もマイペースで、あたたかい。
お年寄りがワインをグビグビ飲っているカフェ。
レストランで食べた、洗練されてない牛肉のワイン煮込み。
葡萄畑に囲まれて飲んだワインの味。
それらは決して特別枠でなく
人の生活に根ざして、手の届く場所にあるものでした。

そんな匂いのする
フランス料理店が増えています。
イタリアだけでなく、フランスでも若いコック達が
そうとうがんばって帰ってきています。


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2004年4月12日(月)

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