至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第40回
焼酎に、『まとや』で目覚める

基本的に、お酒に別の何かを加えるのが
あまり好きではありません。
あまり、なので絶対ではないですけど。
とにかくふと気がつくと
手にしているのは、ストレートで飲めるお酒。
ビール、ワイン、日本酒であり
バーボンよりシングルモルト、
ジンよりウォッカ、それにラム。
泡盛も生(き)で飲むかロックで、水では割りません。
私がお酒に強いのでなく
ただ、おいしいと感じないからです。

それまで私の中での焼酎は
水で割ったり、お湯と梅干しだったり
果汁のサワーで飲むもの。
「次の日がラクなお酒」ではあっても
決して好きで飲むお酒ではありませんでした。
そのせいか、焼酎ブームになっても
聞かない振りをして
黙って通り過ぎるのを待っていたのです。

そんな私の偏見をあっさりかわし
焼酎へ扉を開いてくれたのが、恵比寿『まとや』。
宮崎料理のお店です。
ここは日本酒も充実していますが
焼酎も早くから、数多く取り揃えていました。
今でこそ米・麦・芋などの区別を
みんなが楽しむようになってきましたが
その先駆けではないかと思います。

宮崎なまりの朴訥な板長(今はだいぶ
なまりが取れて、ちょっと残念)が作る料理は
お通しのミルキーな胡麻豆腐から始まり
地鶏や旬の魚介も堪能できますし、
最後は漁師料理の「冷や汁」で〆。
こんな南の料理を前にすると、もはや
焼酎に背を向けたままではいられません。

ビギナーはおずおずと、お勧めの焼酎を訊ねます。
お好みは、と返され、焼酎の表現方法を
知らないことにはたと気づきます。
すると板長は、香りの強い方がいいですか? と助け舟。
質問にYES/NOで答えるうちに
私の前には
「き六」(“き”は七を三つ書く字)という一杯が
ロックで現れました。

眉間にしわを寄せながら
薄いグラスに口をつけ、ひとくち含んでみると
芋の優しい香りに顔がほころびます。
焼酎ならではなのか、芋だからなのか
キレがありつつまろやかな味わい。
これが、脂ののった「胡麻鯖」や
揚げた米の衣が香ばしい「まとやまんじゅう」に
じつによく合うのです。
いやー、焼酎党の方々、
知らなかったとはいえごめんなさい。
そう(心の中で)深々と頭を下げたデビューでした。

土地の料理には土地の酒が合う、とは
よく言われることですが
まさに、宮崎の料理が
私に焼酎を飲ませてくれたのだと実感しています。
今では、『まとや』に行くたび
あれこれ焼酎を試しては
冷や汁で〆る、立派な宮崎人(?)の私です。

※ちなみに最近は「爆弾 ハナタレ」という
すごい名前の芋焼酎が気に入りました。


■まとや
東京都渋谷区恵比寿南2-8-5 TEL 03-5772-0147


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2004年2月13日(金)

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