至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第27回
秋田の酒を愛する人々

秋田の居酒屋『酒盃』店主の沖口さんは
蔵元にも足繁く訪れていますし
蔵元を呼んでの
試飲会なども積極的に行っています。
地酒を50種以上も揃えているのは
店のウリというよりも、
秋田のお酒を知ってもらうためだそうです。

だからお酒を最上の状態で出せるよう
管理はもちろん、飲むときの微妙な温度も
非常にきっちりとしています。

もちろん東京でも全国の蔵元に足を運んで
熱心に勉強している居酒屋もありますが
地方のいいところは
それがいつでもできること、濃密にできること
そして
蔵元と「一緒に」できることではないでしょうか。
秋田では、そんなふうに
お酒を造る人、売る人、供する人が一緒になって
秋田のお酒をもっと良くしていこうという
気運が高まっているように感じました。

『酒屋まるひこ』もそのひとつ。
小さな店内には
およそ空港や駅などの物産店では見つけられない
銘柄も揃っています。
お勧め酒リストには
銘柄(生産地)、区分・酒名から使用米、精米率、酒度に酸度、
そして使用した酵母に店主のコメントまで
8ページにわたってびっしりと書かれています。
これだけで情熱のすごさがわかるというもの。

私のリクエストは、純米酒。
でも甘ったるくなく、ふくらみのあるお酒。
栗谷さんが勧めてくれた数本から選んだのは
まず、平鹿町にある浅舞酒造の
「天の戸 美稲(あまのと うましね) 特別純米 ひやおろし」。
美稲はもはや全国的にも有名で、私も好きなお酒ですが
このひやおろしは
県外にもほとんど出ないのだそうです。

もうひとつは、そのご近所にある蔵元、舞鶴酒造の
「朝乃舞 田从(あさのまい たびと) 山廃純米」。
蔵元の後継者となるかたが女性で、
酒造りという男社会の中で
さながら『夏子の酒』のごとく、いろんな協力者を得て
がんばっていると聞きましたが
私としては、女性だからというより
純米酒と、その原料である米作りからこだわるという
エピソードに惹かれました。

こういうお酒を飲むと、たまらなく
造った人に逢いたくなってくる。
正月休みでどの蔵元もお休みでしたが
今度こそぜひ蔵元を訪ね、その場に立って
自分の目と鼻と舌と喉で
秋田の酒と、生まれる場所と、それを造る人々を
感じたいと思っているところです。


■酒屋まるひこ
秋田県秋田市大町4-1-2 TEL 018-862-4676


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2004年1月27日(火)

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