第64回
投資レポートの活用
海外の証券会社からメールでいただく投資レポートは
「売り」や短期的な売買を勧める記事があります。
利益予測を勘案して適正株価(FAIR VALUE)を計算し、
株価がそれよりも上下に離れたときに乖離率(差の割合)を
出して説明しています。
ある時、バンコックの証券会社を回っていたとき、
通りを1本挟んだシーロム通りのS証券とサトーン通りのN証券が
同時に同一銘柄の「買い」と「売り」の推奨を出していました。
出来高がみるみる膨らんでいきます。
現在の適正株価から見て、
高すぎるので「売り」を勧めるところと、
利益予測からみて割安だから「買い」を勧めるところとが
ぶつかったのでしょうが興味深い光景でした。
投資レポートは有益です。
しかし長期の推奨があるといっても
せいぜい3年後くらいまでです。
社会構造や生活の変化の予測などは誰も気にしていません。
私は他国の事例は統計データ集などを見て検討します。
証券会社からの情報を中心に投資の判断をして
成功する場合も多くあるのでしょうが
日本でもレポートを重視して投資する人が多い気がします。
2002年7月に香港で上場された
「中銀香港(控股ホールディング)有限公司」(香港2388)
を見ても感じました。
不良債権に危惧を感じ、
また米国上場が順調にいかなかったのを見た
米欧の機関投資家はこの企業を23%しか買いませんでした。
買った法人は北京政府に近づきたいと思われる
スタンダード・チャータード銀行や長江実業などでした。
ファー・イースタン・エコノミック・レビューを
読んでいてびっくりしたのは
唐突に現れた8万人の日本人投資家が
新規上場のこの株式の推定12%を買ったことです。
日本には、こんなに多くの国際投資家がいたのでしょうか。
わかりにくい事業分野である銀行の
またわかりにくい本土系の香港のこの企業について、
どこまでご自分で納得のいく調査をした結果の投資であるかと
疑問に思った次第です。
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