第970回
■みとっぽ
さんからのQ(質問):借金=少ない方が良い

いつも、とても有益なお話をありがとうございます。
インフレ下の企業の借金の考え方について、
質問させていただきます。

これまで、投資企業を選択する際、
なるべく負債が少ない企業の方が良いと考えておりました。
しかし、このたび、Q先生の著書を読む中で、
次のような記述に接し、
必ずしも借金が良くないと言い切れないのだろうか?
・・と思うようになりました。

『香港の挑戦』170頁より)
「(日本は)インフレがなかったら、
とっくのまに倒産したであろう企業の債務を実質上、
大きく目減りさせることに成功した」
(そして、アメリカやヨーロッパの企業が設備投資をする場合、
自己資本で賄ってきたことと対比しつつ)、
「なかでも最大の傑作は借金経営で貫いてきた日本の企業が、
設備投資の大半を借金に頼ったために、
激しいインフレの下でも
償却不足におちいらないですんだことであろう」

この記述は、新鮮な驚きでした。
そうであるならば、インフレの進む経済成長国では、
むしろ上手に借金を利用する企業が、最も成長しやすいことになります。
「借金=少ない方が良い」という考え方を、
多少、修正した方が良いのでしょうか。


■QさんからのA(答え)

「香港の挑戦」という本は
もう25年も前に書いたものでありまして、
その頃はまだ日本の経済の成長が続いていた時でした。
当然経済の成長する時は緩やかなインフレが続きますので、
インフレの中で上手く仕事をやろうと思えば、
借金の利用できる人は自己資金だけでやる人に比べて
効率があがるということで、
私が借金のすすめとか借金学入門を書いた時期でもあります。

でもそれは、いまの日本や香港ではあてはまりません。
時代によって時の流れがありますので、
その流れに応じて仕事をやるということが大切だと思います。
あなたの場合は年齢的に
そういう経済成長の時代を経験していないので、
大へん驚かれているようですが、
借金をした方が得な時代もあったのです。

しかし借金は両刃の剣みたいなものですから
使い方を一歩間違えるとえらい目に合わされます。
どうか、私の本を読む場合でも、
その時代のことを頭に浮かべて上手く対応して下さい。


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