“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第712回
津市おでん屋「オサム」で日本酒談義

松阪市の「一升びん」では、
昼の遅い時間に数人前の焼肉を食べてしまったので、
その日の夕食はなかなか行く気になれなかった。
津に戻ってホテルで風呂に入ったりして体調を整えて、
毎年一度は訪問している
おでん屋の「オサム」を訪問することにした。

大門という津駅からタクシーで千円ちょっとのところに
「オサム」はある。
夜の9時近くに到着したら、カウンターは先客が二組あった。
隣のご夫婦は津市に三年前から住んでいて、
「オサム」の訪問は初めてという。
その隣の若い男性と日本酒談義をしていて、
そちらの会話に加わることになった。

お腹いっぱいだったが、
トマト、がんも、さえずりとおでんを注文。
黒牛純米の燗に合わせた。
こちらのトマトはとてもいい味わいに煮てある。
注文してから、トマトを鍋でさっと煮て提供してくれる。
トマトと鰹出汁のマッチングがとてもいい。
出汁の旨みをトマトの酸味がさらに引き出している。
隣の若い男性は地酒好きで、特に冷酒にこだわっているという。
そこで、燗酒の美味しさについて少し話しをしてみたら、
とても興味を持ったようで、
隣に移動してきて、燗酒談義となる。
彼は燗にすると酒がひっかかる感じがして
飲みにくいというので、
いい酒は燗が美味しいと実際に燗酒を飲んでもらった。
店主のオサムさんも、
私と一緒になって燗酒の旨さを解説する。

まだ日本の地酒居酒屋では冷酒至上主義のところが大半で、
燗を大事にする店は希少だ。
東京では燗酒が少しは流行っていて、
随分燗を自由に飲ませてくれる店が増えてきたが、
地方ではいい造りの地酒を燗にしてくれる店は少ない。
最後にカマンベールのおでんをいただいたが、
チーズと鰹出汁の組み合わせも意外ないい相性を示す。
一年ぶりに旧交を温めた一夜だった。


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2007年6月12日(火)

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