“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第649回
絶品の泡汁を再び

二年ぶりに泡汁を食べる機会が訪れた。
泡とは何かというと、
日本酒のモロミの発酵過程で生成される泡。
最近は泡が出ると始末が面倒なので、
泡なし酵母の901などを用いる醸造方法が増えているが、
泡はもろみの醸造過程の状態を判断するのによく用いられる。

この泡を用いた鍋が泡汁で、以前、秋鹿酒造の造りの手伝いに
1週間ほど蔵入りしていたときに、
谷淵杜氏自ら作ってくれて、
粕汁とは全く違う味わいに感動したものだ。
さて、その泡は発酵過程でタンクの淵まで盛り上がってくるが、
ある時期を過ぎると、収まってくる。
この泡がモロミタンクの内側にひっついたものを、
剥がして、粕の代わりに汁に用いると、
絶品の鍋ができあがる。

今回、何故泡が入手できたかというと、
秋鹿酒造の蔵人から連絡があって、送ってくれたから。
今年の「山廃純米山田錦70%」を醸すモロミタンクの泡。
できれば、上槽した酒と合わせて愉しみたいが、
まだ出荷していない。
そこで、造りが同じで米違いの「山廃純米雄町70%直汲み」と
合わせることにした。
泡汁の具をどうしようか考えた。
秋鹿酒造で谷淵杜氏が作った泡汁の具は鯖だった。
蔵を離れるときに土産でくれた泡を、
高田馬場「真菜板」に持ち込んで作ってもらった泡汁は、
西崎ファームのバルバリー鴨だった。

そこで、思い当たったのは、
数日前に西崎さんから、
今年のマガモがそろそろ終わる時季であり、
ぜひ一羽味わってほしいという連絡があったこと。
マガモと泡汁の組み合わせは初めて。
まずは、マガモ丸一匹を捌く。
モモ、胸、手羽とはずし、内臓はレバー、
砂肝、心臓を取り出して、汚れをとる。

そして、泡汁の出汁の準備。
今回は、まずは羅臼昆布で出汁をとり、
そこに鴨のガラをいれて煮込む。
灰汁を丁寧にとり、しばし煮込んでおいて、
そこに秋鹿の泡を投入。
ガラは取り出して、野菜を入れて、
鴨肉を煮始めて、泡汁の開始。
泡のいい香りが漂ってきている。


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2007年3月1日(木)

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