第623回
本物の伝統食材・加工品の継承の危機
このコラムで取り上げてきた食材、調味料などは、
日本の二千年の歴史のなかで発展し、
継承されてきた本物の伝統食品だ。
ところが、最近では、効率を重視した日本の社会のなかで、
本物の美味しさよりも、
安さを選択する消費者が多くなっている。
その効率化の犠牲になったのが、
三浦大根であり、アサクサノリ。
三浦大根は病害虫に弱く、生産が難しいこと、
そして、柔らかいので流通経路のなかで痛み易いこと、
店頭に並べるには大きすぎること、
などの効率社会とは合わない面で
青首大根にとって代わってしまった。
アサクサノリも、秋に台風が来ると壊滅するおそれがあり、
見た目も赤っぽくて、
消費者が美味しそうに思わないという理由で、
丈夫で大きなスサビノリに代わってしまった。
三浦大根も、アサクサノリも、
復活を願っている一部の農家と漁師を紹介してきた。
消費者が、これらの伝統食品の価値を認めて、
適正な経済活動として
これらの生産活動が復興していくことを願いたい。
観光釣船の巻くコマセは、オキアミを使っていて、
たんぱく質が分解しにくいので、海底に堆積して、
磯の海草を枯らす原因となっている。
大原の鮑も付近の観光釣船の犠牲になって、激減したようだ。
昨年知合いになった、
森戸海岸で昔ながらの漁法を行う蛸壺漁師矢嶋四郎さんの
漁師小屋が撤去される可能性が強くなってきた。
葉山町の施策として、
御用邸まで砂浜を撤去して遊歩道を造る工事を行うという。
これまで、東京湾では9割がたの海岸が、
戦後の経済復興の名のもとに、
化学プラントやアミューズメント施設などの建設へ向けて
埋め立てられてきた。
漁師は漁業権を売り払い、転業していった。
森戸海岸では、沖の磯へ向かう途中にも波除と称して、
鉄筋コンクリートの建造物を現在建設中である。
それが、どの程度の
海のなかの生態系に影響するかはわからないが、
海岸の砂浜まで奪おうとしている。
自然の砂浜のほうが、遊歩道よりもどれだけ快適なのかを、
葉山町は理解していないようだ。
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