“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第548回
手造り和三盆の旨さのヒミツ

岡田製糖所の説明で、和三盆の製造工程がよく理解できた。
残念ながら、実際に製造するのは
サトウキビの収穫後の冬場であり、
製造工程の実際を見ることはできなかったが、
工場を見せていただいたので、
DVDの映像と合わせて理解が深まった。

和三盆の製造工程を列挙すると次のようになる。

1. 絞り(締め場)
2. あく抜き・煮詰め(釜場)
3. 冷却
4. 蜜抜き(押し)
5. 蜜抜き(砥ぎ)
6. 乾燥

まずは、締め場での絞り。
ローラーにサトウキビの茎を通して、
エキスとなる汁を絞り出す。
いまでは電動モータで駆動しているが、
昔は牛を使って回転させていたそうだ。

絞り出した砂糖のエキスは釜場で煮詰められる。
それも2段階。
まずは、荒釜と呼ばれる大きな釜であく抜き。
次に、あくを抜いたものを煮詰めて、粘りを出す。
その粘りの出し具合は熟練した職人が指先で確認して、
トロっとした具合に仕上げられる。

煮詰めたものを冷やし釜に移し、
混ぜながらゆっくり冷やしたものが白下糖。
精製される前の状態で、蜜がたっぷりと含まれている。

そして、圧搾して蜜を抜く工程に入る。
白下糖を麻か木綿の袋に入れて、
何重にも重ねて押しふね槽に入れて、上から圧力をかける。
まさに、日本酒のモロミを搾る酒槽と同じやりかた。
長い樫の棒の先に石のおもりをつけ、
根元が槽に入れた袋の上に当たるようにして、
テコの原理で圧力をかける。
一昼夜そのままにして蜜を絞る。
この樫の棒は長さが数mの長い立派なものだが、
長年使っていてひび割れがしていた。

つぎの研ぎの工程が一番職人技が必要らしい。
押し槽で一昼夜絞った蜜を研ぎ槽に入れて、
手と水で研いでいく。
これは、手打ち蕎麦の練りの作業に似ている。
この押しと研ぎは、昔は三度繰り返したものらしいが、
現在の岡田製糖所では五度も繰り返す。
そうすることによって、
茶色をしていた白下糖の蜜が抜けて
真っ白でさらさらに仕上がる。

この精製されたものをゆっくりと乾燥して、
和三盆糖ができあがる。
このような、手間隙かけた手造りの和三盆は
世界で岡田製糖所しか作っていない。
どうりで、こちらの和三盆はとても爽やかで上品な甘み。
料理に使うとべとべとせずに、
さっぱりとしたまろやかな甘みに仕上がる。
私も料理に使って、
プロの料理人からこんな味わいをどうやって出したのかと、
質問を受けることもしばしばある。

職人の親方は高齢だが、
現在息子さんが一緒に作業を行って、後を継ぐそうだ。
今後も長く日本で唯一つ残った
伝統職人芸を守っていていただきたい。


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2006年10月4日(水)

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