|  第477回獅子唐の菜が旨いのにびっくり
 錦糸町に今年春オープンした居酒屋「井のなか」は相変わらず好調で、
 常に日本酒に合う酒肴を研究して進化させている。
 随分評判になっているようで、最近は満席状態がつづいていて、
 何日か前に予約をすることが必要。
 当日に来たフリの客が断られているところを何度も目撃している。
 先日はたまたま、他の店が休みだったので、
 駄目もとで直前に急遽「井のなか」へ電話をしたら
 対応可能ということで、幸運だった。
 開店5時に到着。1時間もしないうちに満席になる。
 まずは秋鹿山廃雄町70%の燗を飲みながら、
 おまかせでいろいろは酒肴をいただく。
 野菜サラダ、煮しめなど自然でとても旨い。
 連れもとても喜んでいた。
 そうしているうちに、何かの野菜のお浸しが提供される。見た目はモロヘイヤのような濃い緑だが、粘りはない。
 甘みと適度な苦味がようバランスしていて、
 この味はこれまで食べた経験がなかった。
 ホウレンソウよりも濃く、野趣あふれた味。
 小さい実がついている。
 何の野菜か聴いてみたら、獅子唐という答えが返ってきた。
 それも三浦半島の「ながしま農園」のもの。
 ながしま農園では「生産した者が自分で食せない野菜は販売しない」
 というポリシーのもとで、
 野菜が本来持っている力を十分出すように
 できるだけ農薬を使わずに、多品種少量栽培している。
 「井のなか」ではながしま農園の野菜を使っていて、
 今回は「ホウレンソウよりもお勧め」と、
 獅子唐の菜が届いたという。
 季節は今頃を逃すと葉が硬くなるので、
 わずかな期間しか愉しめないという。
 「井のなか」でも獅子唐のお浸しは初めての試み。
 たしかに、今回初めて食べた獅子唐の菜は食べ始めたら病みつきになる味だった。
 蔵元から直送された「るみ子の酒」H11BYの燗を合わせたが、
 その古酒の力強さに負けない味わい。
 酒が進むこと、進むこと。
 獅子唐の美味しさに驚いたと同時に、
 ながしま農園はぜひ訪問しなければと、心に誓った夜だった。
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