|  第476回東京でベストな蕎麦屋はどこか?
 ある出版社の企画で蕎麦屋のランキングを執筆することになった。
 10店舗くらいのいい店の順位と特長を紹介するという。
 料理屋の愉しみ方は、どちらが上かというより、
 その個性の違いを愉しむべきということを持論としているので、
 この企画を受けるかどうか随分悩んだが、
 その点が読者に理解いただけるような表現のもとで
 執筆することにした。
 次に悩んだのが、どこに重点を置いた評価をするかという点。蕎麦屋のよしあしも客が何を求めているかで随分違ってくる。
 蕎麦切そのものの旨さを純粋に愉しむ客もいれば、
 蕎麦屋の店構え、店内の雰囲気、サービスが大切だという客もいる。
 また、最近では「蕎麦屋酒」という言葉も定着したようで、蕎麦屋で飲む酒が一番の愉しみという客も随分増えてきている。
 客の満足度といっても、
 見るべき評価項目の重みが違うと、評価結果も変わってくる。
 そこで、自分が蕎麦屋を愉しむうえで、
 最も重視している二つの観点に絞って、
 それぞれのランキングを挙げることにした。
 ひとつは蕎麦切の純粋な美味しさ。
 もうひとつは蕎麦屋酒の愉しみ。
 蕎麦切りの美味しさについては、これまた、それぞれの蕎麦屋で考え方が違い、
 なかなか単純に優劣をつけるのも難しい。
 ということで、蕎麦切を今食べに行きたくなったときに、
 どの店を先に重い浮かべるかということを考えて、
 蕎麦屋をあげることにした。
 すると、1位から4位までは、自家製粉はもちろんのこと、
 玄蕎麦(殻がついた蕎麦の実)から仕入れて
 皮剥きも自前でやっている蕎麦屋になった。
 これは偶然ではなく、玄蕎麦から仕入れていると、
 栽培生産地と直接取引が可能となって、
 原材料の品質を高水準に維持できるためだ。
 蕎麦屋酒の観点では、全く違った蕎麦屋が名前を連ねることになった。
 というのは、美味しい蕎麦切りや酒肴を提供する店でも、
 その蕎麦に合う旨い酒を置いているところが実に少ないからだ。
 蕎麦屋酒の愉しみとしては、
 やはりしっかりとした燗に向く地酒を置いていることが大前提だ。
 その本は7月には刊行される予定。蕎麦屋だけでなく、
 いろいろなランキング記事が掲載されるはずだ。
 どの蕎麦屋を挙げたかは、それまでのお愉しみにしておきたい。
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