第437回
東京湾に代表される日本の漁業の衰退
昔は、東京湾は世界にも稀な、
質の高い魚介類がたくさんとれる漁場だった。
最盛期には年間15万トンから20万トンもの漁獲量があった。
それが、海岸の埋め立てによって、漁場が激減して、
いまでは漁師の数も僅かになっている。
いまでも、東京湾の魚介類はとても品質が高い。
洲や瀬と呼ばれる遠浅の海には、アサリ、アオヤギなどの貝、
アイナメ、ギンポ、イシガレイ、ハゼなどの魚が生息している。
また、内湾の岩礁域では、
カサゴ、アイナメ、ウミタナゴ、マダイ、イサキ、
イシダイ、ベラ、フグなどの多くの魚に加え、
マダコ、サザエ、ウニも生息している。
さらに、マダイ、クロダイ、メバル、マコガレイ、
クルマエビ、シャコ、アナゴなどの江戸前の魚が目白押し。
瀬戸内海と東京湾の魚介類を比べて見れば、
あきらかな違いがある。
瀬戸内海の魚は淡白で繊細であり、
東京湾の魚は味が濃くて深みもある。
この違いが何故かというと、
注ぎ込む川によるところが大きいらしい。
東京湾には、狭い範囲にたくさんの川が流れ込んでいて、
栄養分が多量に流れ込んでいる。
これによって、植物性プランクトンが発生し、
それが、貝や海藻、海草の栄養分となり、
魚の身に連鎖されている。
それで、江戸前の魚介類は鮨、天麩羅などの
江戸前料理にとてもむいている。
酢飯が魚介類の味わいを引き立てるし、
天麩羅でカラっと揚げることによって、
余計な水分が抜け出て旨みが凝縮する。
一方、瀬戸内海の魚は繊細な味を
割烹料理として愉しむことに適している。
関西では東京と違って、淡白な味わいと、
プリっとした新鮮な食感を愉しむことに主体がある。
それで、江戸前料理のように、
魚を熟成させることはあまりしない。
さて、このような魚介の宝庫だった東京湾の漁業が
何故衰退してきたかというと、昭和の高度成長の罪が一番重い。
東京湾は江戸時代から
干拓・埋め立て工事は継続して行われてきていた。
次回に東京湾の漁業衰退の歴史を紹介し、
その犯罪的な行為をしたのは誰かを考察しよう。
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