|  第328回驚きの割烹が関西に
 明日の12月1日に、NHK総合テレビ(1CH)の番組「おはようニッポン」のなかの
 「まちかど情報コーナー」で燗酒を特集することになりました。
 5分間の短い時間ですが、
 高田馬場「真菜板」さんで燗の美味しいつけかた、
 そして、私の大学の研究室で熟成酒の燗を紹介しますので、
 早起きしている方はぜひ見てください。
 開始時刻は朝の5:45頃からと6:45頃から、
 同じものを2回放映予定です。
 奈良に出張の機会があって、密かに訪問してみたいと思っていた割烹で、
 美味しい料理と地酒を堪能することができた。
 豊中市にある『桜会』(さくらえ)と言う店 
          。
 店主の満田さんは、実は私のこのコラムを読んでいて、
 激励のメイルをいただいたので、この店を知ることができた。
 神亀専務に心酔しているという。そんな店が旨くないはずはない。
 お昼に学生を連れて訪問。行きは豊中駅からタクシーを利用して1メーター。
 高校のグラウンドの向いにひっそりと店が佇んでいる。
 周囲には飲食店もほとんどなく、
 ロケーションとしては不利な条件だ。
 店主の満田さんはカウンターのなかから笑顔で迎えてくれた。
 まずは、小鉢で豆腐が提供される。豆腐といってもふわっとした表面が不思議。
 なんと、にがりは使わずに、豆乳を泡状にして固めたものという。
 泡豆腐と呼ぶ。
 こうしたほうが、表面積が増えるので甘みがでるという理由だ。
 たしかに、軽い食感で大豆の旨みが感じられる。
 表面には小海老を茹でたものが乗せてある。
 次にでてきものは、水菜と子持ち昆布のお浸し。水菜がしゃきっとした瑞々しい旨さをもっている。
 聴いてみたら、能勢の畑で
 定年退職したサラリーマンがこだわって造っている野菜とのこと。
 有機栽培の野菜を色々探しているうちに、ゆきあたったという。
 能勢は秋鹿酒造が自家栽培田圃で山田錦と雄町を栽培している地。
 昼はさんさんと日が照り、夜は温度が低くなるので
 優良な野菜が育つのはよく理解できる。
 あわせた地酒は、まずは島根の誉池月の「はすみ」、そして、富山の勝駒、栃木の澤姫の生
  (きもと)の燗。 満田さんは神亀を知ってから
 地酒のとこがよく理解できるようになったようで、
 料理に合う酒をお任せでお願いしても安心できる。
 次が甘鯛を寄せたものと、銀杏豆腐の椀。甘鯛はミンチにしてそれに豆腐を和えて
 椎茸、人参などの野菜を加えて蒸したもの。
 きれのいい出汁が甘鯛と銀杏豆腐の旨みをひきたて、
 その出汁を飲むと甘鯛の香りが奥深くひそんでいる。
 お造りが面白い。明石の鯛、産地を忘れたが鰤、和歌山沖のアオリ烏賊、
 それに日本海のトロ。
 これらを、醤油を泡状にしたものをつけていただく。
 この醤油の加工は意外性を狙ったものではない。
 素材の旨みがそこなわれないように、
 アミノ酸の少ない、淡めの自己主張がない醤油を探していて、
 最後に泡状にして口のなかで、
 素材よりも先に溶けてなくなればいいのでは、
 と思いついたのが発端という。
 たしかに、この泡醤油を少し刺身の表面につけて、口のなかに入れるとフレッシュな醤油の味が最初にでてきて、
 その後で、刺身の素材の味わいが広がってくる。
 満田さんのアイディアは、
 いかに刺身の素材を美味しく食べてもらうか
 という試行錯誤の末に生まれたものだ。
 このような、必然性のある新しい調理のアイディアは大歓迎だ。
 意外性だけを演出するために、
 逆に素材の味に無関係な調理をしている
 創作料理屋に食べてもらいたい。
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