“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第311回
日本酒の評価基準がない

日本酒が一般消費者に浸透しない理由の一つとして、
品質を表す分類が無いことがあげられる。
ラベルを見ても、どのレベルの日本酒であるかが分からない。
ワインは原産地呼称法で品質が分類されていることが多いが、
これが日本酒には無いので、
海外に日本酒を紹介する場合にも理解してもらいにくい。

もちろん酒税法から、
糖類添加、醸造アルコール添加は表示しなければならないし、
本醸造、純米、吟醸、大吟醸などの表記から、
アルコール添加の度合い、精米歩合の度合いは
判断することができるが、だからといって、
純米酒なら全て品質が高いとは限らない。
酒税法は文字通り税金を国が取りはぐれないための法律であり、
日本酒の品質に関連した酒造基準を定めているわけではない。

また、世間一般で日本酒の性質を表現したものとしては、
甘口、辛口という分類、
そして淡麗、芳醇というそれに対する組み合わせが
古くから言われているが、
甘口、辛口ほどあいまいな表現はない。
英語の表現のスイートとドライに対応する用語だが、
ドライの意味合いは甘みが少ないということで、
アルコールが多かったり、
炭酸が多かったりするとドライに感じる。

日本酒の場合には、
甘みは糖分がどれくらい残っているかということが
甘口の度合いになって、
比重の尺度である日本酒度で数値化されているが、
この数値が同じでも甘口、辛口の感じ方は
飲んだ人によって随分違う。
糖分が少なくても、米の澱粉質の旨みを甘みと感じたりする。
従来、甘口、辛口という表現、
それも、日本酒通は辛口が好きというもっともらしい風聞は、
戦後の糖類添加の三増酒全盛時代のものだ。
昔の糖類添加をしていない辛口の酒でなければ飲まないという
日本酒愛好者の心意気が、自然に広まったと考えられる。
現代でも私は辛口の酒しか駄目とか言う酒飲みもまだ多いが、
甘口、辛口に関係せずに旨い酒はたくさんある。

いずれにしても、旨い、まずいという尺度を表す基準は、
日本国家も日本酒業界も設定していない。
次回はどのようにすれば、
日本酒の品質基準を設定できるようになるか
というアプローチについて提案したい。


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2005年11月7日(月)

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