|  第312回SSIの分類や全国新酒鑑評会は品質基準とはならない
 日本酒の特性を表現するものには、日本酒造組合中央会が
 SSI(日本酒サービス協会・酒匠研究会連合会)
 に依頼して作成した、
 味の濃さと香りの強さによる2軸の特性表示が提案されている。
 しかし、この2軸のどこに酒があるとしても、
 その酒の特性の一部が表現されているだけで、
 旨いかまずいかの品質基準とは一切関係がない。
 だいたい、SSIの進めている日本酒の味わい分類法は、
 もともとワイン業界のソムリエたちの知恵の範囲であって、
 日本酒独特の燗酒の味わい、熟成過程による味乗りなどの、
 伝統的な食文化の叡智に欠けている。
 では、「全国新酒鑑評会」はどうか?これは、昔の国税局醸造試験場、
 今では、独立行政法人酒類研究所が主催する大規模な鑑評会で、
 出品する日本酒の仕様は吟醸酒で、
 原料が50%以上山田錦を用いているかどうかで、
 二つの区分に分けられている。
 そして、評価は味・香りによる官能評価。
 つまり、製造方法についての基準は設けられておらず、
 評価委員が味と香り、
 あるいは、色などを見て感覚的に判断するものだ。
 しかも、評価対象となるものは、香りが一番、
 それに、雑味、雑香などがでていないことという
 マイナス評価が主体となる。
 全国新酒鑑評会は
 酒を造る蔵人たちのやる気を起こさせるという意味では、
 日本酒業界に貢献しているが、
 カプロン酸ぷんぷんの吟醸酒が
 もてはやされるようになった元凶でもある。
 ワインでは11月なかばには、ボージョレーヌーボーが出荷されるが、
 日本酒の全国新酒鑑評会は、
 このボージョレーヌーボーのような
 新酒の状態で評価しているようなものだ。
 熟成による旨みが乗っていく可能性などは
 評価対象には入っていない。
 日本酒では、ワインのような原産地呼称法のような、
 品質そのものを基準化するという動きは過去にはほとんどなく、
 今後もでてきそうもない。
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