|  第262回自然のなかの朝食はリゾットと饂飩
 山中の緑に囲まれた朝はことさら爽やか。ひんやりと澄んだ空気のなかで、
 小鳥のサエズリを聞きながら渓流沿いの道を散歩していると、
 昨夜の美酒・美食がまた頭の中に蘇ってくる。
 キャンプ地に戻り、朝食の準備が進んでいるのを見守る。今回はアウトドアの達人のSさんが前日のリゾットを、
 そして、胡桃亭の村上さんがチタケを用いた饂飩を作っていた。
 リゾットは玉葱を刻み、それを、フライパンで炒って、
 そのなかに野菜、肉など前日の残り物の食材と米を入れて、
 湧き水を満たし、煮る。
 最後の味付けを村上さんが行う。
 熱々のリゾットを深めの紙皿に取り、ふうふうと食べる。
 昨夜は随分飲んだが、
 そんな身体に温かく、優しく入ってくる極上のリゾットだった。
 チタケ饂飩は、チタケと茄子を炒め、それを胡桃亭の饂飩の辛汁に入れて煮込む。
 今回はダッチオーブンを使用する。
 炭火で行ったが、いい具合にぐつぐつと煮えてくる。
 チタケというのは、よく栃木県で蕎麦や饂飩の汁に入れて食べる。
 出汁をとると本当に旨い茸だ。
 茨城県、福島県でも採れるが、
 食べるのは断然栃木県民が群を抜いているらしい。
 饂飩を茹でて、湧き水を利用して冷やしておく。この湧き水の沢は、調理には本当に便利であった。
 その饂飩をチタケの出汁の汁につけて食す。
 こくのある旨みと上品な香りが饂飩に絡まり、
 口のなかで絶妙のハーモニーを醸している。
 下のほうから聞こえるせせらぎの音も、
 食欲をさらに引き出してくれて、何杯もおかわりをしてしまった。
 自然の中で、美味しい食材を厳選して、野趣溢れる料理を食する。
 1泊で心置きなく酒を飲む。
 日帰りのBBQなどでは得られない満足感があった。
 なんといっても、帰らなくていいという余裕、
 周囲の自然に自分を同化できてしまう環境、
 そして、極上の食材と酒の味わいが、
 究極の非日常性をつくりあげてくれた。
 同行した仲間と共有した美味しさは、
 いつまでも忘れられないものであろう。
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