“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第232回
純米無濾過生原酒の常温熟成

『世界一旨い日本酒』では、
生酒も常温熟成させる話を載せたところ、
それだけが、インパクトがありすぎて反響を呼んでいるようだ。
あの本の趣旨は、日本酒の低迷は、
アルコールの過剰添加、糖類などで作る調味液添加の偽者の酒、
過度の吟醸酒ブーム、淡麗辛口ブームなどの、
燗を大切にしない風潮、
地酒有名蔵の拡大路線などが問題であることを指摘して、
本物の酒の造りに戻ることが
最優先課題ということを提唱していることだ。

そして、いい造りの日本酒なら、
熟成してより旨くなり、燗して最高の味になる。
その熟成も冷蔵熟成よりも常温熟成のほうが旨みが早くでる。
生酒も麹造り、造りをしっかりとしている本物の酒であれば、
常温熟成しても火落ちする危険性は少なく、
生老ねも少なく美味しく飲める、と飲み方を提案している。
そして、本物の酒造りにもどることを、
地酒黎明期の「甲州屋」の児玉光久さん、
「神亀酒造」の小川原専務、
「味里」の杉田衛保さんの3名の奇跡の出会いから始まり、
児玉光久さんの急逝で途絶えたかのように見えた、
本物の酒造りの志がいま色々な蔵に蘇っている現実を紹介している。

純米無濾過生原酒を何故熟成させるかというと、
火入れの酒よりも熟成の速度が早いからだ。
火入れの酒でもじっくりと長い年月をかけて熟成させれば、
とてもよい味のりがしてくる。
しかし、生酒のほうが2倍以上熟成の速度が早いように感じる。
少ない年月で美味しい思いをしたいという意思で、
純米無濾過生原酒の常温熟成を自分では実践しているわけだ。

ただし、火落ちの危険性が全くないわけではない。
以前、生酒を冷蔵していても火落ちした経験もあるが、
まずは、その酒の造りのよさで、火落ちするか、
また、熟成でへこたれるかどうかが随分違う。
麹造り、造りをしっかりとしている蔵の酒は、
これまで多数の数の常温熟成を試みているが、
まだ火落ちしたことは皆無だ。
酵母がたくましく育ち、
火落ち菌に犯されにくい酒質になっているのか、
または、そのようないい造りをしている蔵は
衛生面に十分な配慮をして、
火落ち菌が住み着きにくい蔵環境になっているのだろう。

生酒の常温熟成はリスキーではあるが、
失敗してもともとと、試みてみることをお勧めしたい。
その結果の美味しさを一度味わえば、
病み付きになることはうけあいだ。
従来の日本酒業界の常識では無謀な管理方法だが、
理屈だけで体験せずに拒否するのは、
美味しい体験を失っているだけだ。


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2005年7月12日(火)

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