第193回
イタリアワインの会 〜その3
白ワインを飲み進んだところで、
シャンパンを開けることになった。
今回はスプマンテが手元になかったので、
コートドブランでブランドブランの造り手としては、
トップレベルのラルマンディ・ベルニエを持参してきた。
以前、このコラムでも
ヴィンテージものの美味しさを紹介したことがある。
ラルマンディ・ベルニエは同じ自家栽培・自家醸造
すなわち、レコルタン・マニピュランの
ギーラル・マンディの甥のドメーヌで、
彼の造るシャンパンはいまでは叔父のものを越えている。
このシャンパンはNVでもドサージュ、
すなわち、門出のリキュールで
甘みの調整をほんの僅かに行っているだけだ。
それ故、自然な味がダイレクトにでていて、
それが、そのまま熟成されている。
門出のリキュール添加は日本酒のアルコール添加、
糖類添加に似たプロセスで、発酵を止める方向に働く。
それ故、ドサージュをしていないシャンパンは
熟成が早いということを以前紹介した。
これは、日本酒で純米酒がアルコール添加の酒よりも熟成が早く、
しかも、きちっとした造りのものであれば、
とてもいい具合に熟成することに似ている。
やはり、大手のドサージュを多めにしているシャンパンとは
熟成の具合も全然違う。
旨い、まずいという差ではなく、味が素直なのだ。
いわば、銀座の化粧をしたお姉さんと、
スッピンの素人のチャーミングな女性のような差だ。
しかし、ドメーヌシャンパンなら、
どれでもそうかというとそれは違う。
ここがよく勘違いされ易いところだが、
例えば日本酒でもいい純米酒とアルコール添加の酒を比較すれば、
純米酒の方が自然な味がするが、
どんな純米酒でもそうかというと違う。
いい造りでなければ、
単なる純米造りというスペックだけでは十分ではない。
小さい蔵と大手酒造メーカーの違いも同じで、
小さい蔵で良心的にいい造りをしているところの日本酒は
素晴しいが、そのような蔵は今では希少だ。
かえって、大手酒造メーカーのほうが
安定したいい酒を造っていることが多い。
このVertusの畑の葡萄を使った、
このノンヴィンテージシャンパンを
ワイン好きの友人達がどう評価するかが楽しみであった。
一人はヴィンテージを以前飲んだことがあるという。
香りを丁寧に嗅ぎ、口に含む。
ほのかな熟成香が咽喉の奥をくすぐり、
シャルドネのミネラルたっぷりの甘みが通過していく。
これが、生ハムにとてもよくあった。
ハムの脂の旨みをよく引き出している。
また、ムール貝にもとてもぴったりだった。
やはり、芳醇な味わいは、リディアの後にして正解だった。
イタリア以外のものを持ってきた甲斐があった。
なお、後日、招待していただいた友達から、
翌朝、グラスに残ったシャンパンを嘗めてみたら、
シャブリのプルミエクリュのような
ミネラル分が余計強調されて感じられたという感想を聞いた。
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