“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第159回
桜鯛の季節到来

桜が咲く頃には鯛が旨くなる。
特にこの時季の天然の鯛を桜鯛と言って、
これを毎年の楽しみにしている人も多い。
時季を過ぎて、産卵をしてしまうと鯛の味は格段に落ちる。
桜鯛は桜のように散るのも早い。
しかし、旬がピンポイントだと嘆く必要はない。
日本は南北に細長い列島であるので、
桜鯛が獲れる時季は海域によって違う。
南から北にだんだんと桜鯛が移動してくる。
それ故、結構晩春近くまで桜鯛は楽しむことができる。

桜鯛は確かに美味しいが、
私はやはり秋の頃の紅葉鯛のほうが、
いい鯛にであったことが多い。
ただし、獲れる割合で見ると、
桜鯛に比べて紅葉鯛はとても少ない。
この時季に鯛は獲れるのだが、
紅葉鯛としての旨みを出しているものではないという意味だ。

つまり、紅葉鯛の季節は凄く美味しい鯛に出会う可能性があるが、
確率は低い。
しかし、桜鯛は安定して入手できる。
築地場内の上物を扱っている仲買で、
美味しい桜鯛を入手できる。
明石の鯛はさすがに築地にはあまり入ってこないが、
この時季の天然の鯛はどこで獲れたものでも相当旨い。
養殖の鯛もやはり、春は旨くなるが、
脂のしつっこさ、臭みがあるので、天然ものにはかなわない。

桜鯛を美味しく食べるこつは、
適切な熟成時間を読んで、
味の乗りと食感のバランスが
一番好ましいタイミングで食べることだ。
他の魚でも言えるが、鮨屋で鮨が旨いのは、
鮨種としていいものを仕入れているだけではない。
熟成のタイミングが絶妙だからだ。
いい仕入先を知っていて、
いかにいい鯛を仕入れることができても、
熟成の処理と出すタイミングがずれていては、
仕入れに支払った価値がでない。

最近の割烹や居酒屋は、
熟成をあまりしない状態で鯛の刺身を出すところが多い。
ぷりっとした、新鮮な食感を出すことが一番重要だと考えていて、
味の乗りということを理解していないからだ。
江戸前のきちっと仕事をする鮨屋は、
味乗りと食感のバランスを考えて、適度に熟成している。

私は食感よりも味乗りを重視する食べ方なので、
とてもいい鯛だと3日くらい熟成したものが好きだ。


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2005年3月24日(木)

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