|  第148回日本酒の生酒の常温熟成は本当か?
 読者の方から質問のメイルが来た。拙書「蕎麦屋酒」で、
 純米無濾過生原酒の常温熟成の話を書いたのだが、
 それは業界の常識に反することだ。
 本当に生の日本酒を冷さずに置いて大丈夫か?
 夏の暑い日にはどうするのか?
 という内容であった。
 現在、日本酒の熟成をテーマにした単行本を執筆中で、それがでれば皆様によりご理解していただきやすくなるのだが、
 日本酒の常温熟成についてちょっと触れておくことにする。
 これまでの、日本酒の熟成については、長期熟成酒研究会がまとめた「古酒神酒」に書かれているが、
 冷やして熟成する「淡熟型」と
 常温で熟成する「濃熟型」の二つのタイプがあり、
 どちらも火入れをした日本酒を対象としている。
 従来は生酒は冷蔵しても寝かせると
 「生老」(なまひね)して、生老香がでるので、
 あまり長期にわたって保存するのは難しいと言われていた。
 これは、ある程度は正しい事実であり、
 生酒を長期にわたって熟成させたものは、
 火落ち菌に犯されたり、酵素臭がでてくるものが多い。
 つまり、どんな生酒でも熟成できるかというと、そうではない。
 熟成、それも、常温で寝かして美味しくなる日本酒は限られている。
 その条件とは、しっかりとした造りを行って、
 味がしっかりと出ている酒であることだ。
 アルコール添加した日本酒よりは、純米造りのほうが好ましい。
 それで、しっかりした造りとは何かというと、
 原料米処理が適切で、麹造り、酒母造りが
 きちっとした工程を経ることが必須条件となる。
 麹造りをしっかりとして、麹を酒米のなかに破精させて酵素力を引き出し、
 酒母は打た瀬の温度を低くとって、
 逞しい酵母以外は淘汰されるようにする。
 すると、麹と酵母がしっかりと
 蒸米のなかの澱粉質を糖化とアルコール化して、
 しっかりとした酒になるわけだ。
 そのように造った酒は、雑菌に犯されにくく、
 厳しい環境にまけない逞しさがあるので、
 生酒でも常温熟成が可能となる。
 私の場合は、1升瓶をP箱に入れて、床に積み上げているだけだ。
 真夏の30度Cを越す温度でもそのままにしている。
 それで、これまで熟成に失敗したことはまだない。
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