|  第134回春を感じさせる「蕗の薹」
 この季節になると庭に「蕗の薹」が出てくる。これを蕗味噌にしたり、天麩羅にしたり、
 あるいは、料理のなかの苦味として使ったりすると
 春の訪れを感じる絶好の酒肴になる。
 「蕗の薹」は蕗の花芽だ。花は花成ホルモンの塊である花粉を多く含むので
 精力増強の効能がある。
 苦味成分のアルカロイドは新陳代謝を促進して、
 冬の間に低下していた新陳代謝が高まる。
 精子数を増加するという、まさに春情を催す効果があるという 。
 「蕗の薹」をその旬である初春に食べるというのは、
 まさに人間の四季のサイクルにかなっているわけだ。
 もともと、旬の野菜を食べることは身体にいいことだ。夏野菜は体温を冷ます作用があるし、
 冬野菜は身体を暖める作用がある。
 この人間の生理と野菜の関係は
 長い年月をかけて自然が築いてきた、活きるためのメカニズムだ。
 それが、最近は温室栽培などで
 旬でない野菜が出回っているために、
 実感しにくい状態になっている。
 旬を知らない、感じない消費者と、
 旬を感じさせない野菜生産者。
 これは、日本の食品生産業界が営利、効率化を目指した結果だ。
 野菜の旬を良く知ること、
 そして、真面目な生産者から
 野菜を仕入れる方法を確立することが、
 美味しく、身体によい思いをできることになる。
 蕗味噌は「蕗の薹」のアクをとるために湯がいてからこまかく刻み、味噌と合わせる。
 「蕗の薹」のほろ苦さに味噌の旨みが加わり、
 とてもおつな味になる。
 天麩羅は「蕗の薹」のほろ苦さのなかに埋もれている
 甘みを引き出す。
 味噌汁などに入れても美味しいし、
 湯がいてお浸しで食べても秀逸。
 「蕗の薹」は、まさに早春の味で、
 季節が暖かくなってきたことを身体に感じさせる食べ物だ。
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