第43回
タイユヴァンの伝統と革新
一年ぶりでパリのタイユヴァンを訪問した。
行くたびに変化がある。
店内のインテリアは頻繁に変えていて、
ここ数年はモダンな飾りものがクラシックな壁にかかっている。
メニューの書き方(カルテ)も、今回は料理の皿の絵がなくなり、
シンプルになっていた。
経営者のブリナさんは、
伝統を守りつつも店に変化を求めているようで、
シェフも頻繁に変わっている。
彼は早朝に誰よりも早く出勤して、
二階の執務室で伝票の整理を行いながら、
出勤してくる従業員を見下ろしているらしい。
また、営業中はフロアで自ら接客をして、
サービス状況を常にチェックしていることでも有名だ。
今回はブリナさんは
ニューヨークに出張をしていたらしく不在だった。
代わりに給仕長が色々と面倒を見てくれる。
タイユヴァンはサービスがアットホームで、
日本の慇懃無礼なレストランとはまるで違う。
まずはグラスシャンパンで喉を潤し、
バター風味の小さい菓子パンのようなアミューズを愉しむ。
前菜はシャンピニオンのラビオリ。
シャンピニオンの風味が閉じ込められていて、
シャンパンとよく合った。
メインは鳩にしようかと迷ったあげく、
ラパン(家ウサギ)のロティにする。
前回は野ウサギであるリエーブルを頼んだ記憶が蘇る。
リエーブルは随分濃厚な味わいであったが、
ラパンはクラシックな味付けで、あっさりとしていて、
上品な旨みが乗っている。
ワインはドゥニ・モルテのジュブレシャンベルタン1993年。
デキャンタージュしてもらったにもかかわらず、
固くてなかなか開かない。
2時間経った最後のほうでやっと開いてきて、
落ち着いた果実味が心地よかった。
デザートとビンテージポルトをしっかりと愉しんで店を後にしたが、
美味しさの余韻がいつまでも残っている夜であった。
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