“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第21回
酒と料理の相性を考える幸せ

美味しい料理は酒と合わせることによって、
さらに美味しさが増す。
和食なら日本酒、西洋料理ならワインがやはりいい。
よく和食でワインを出す料理屋もあるが、
合わすために無理をしていて、不自然な感がいなめない。

ワインと日本酒の相性の違いは、
ワインは足し算の相性であり、
日本酒は掛け算の相性と言えることである。
例えば、鴨肉の脂には酸味がよく合うので、
酸度の高いワインが良く合う。
これは、柑橘系果物を鴨に合わして料理するのと同じで、
味の足りないところを補っていることになる。

一方、日本酒は例えば塩辛によく合うが、
これは生臭さを日本酒が消して旨みに変えるからだ。
牡蠣、ホヤなどの独特の癖のある魚介類も
ワインではなかなか合わすのが難しいが、
日本酒は旨みに変えてよく合う。
ところが、日本酒はどんな料理にもそこそこに合ってしまうので、
日本酒と料理の相性という観点での酒選びは
ないがしろにされている。
結構いい料理を出す割烹料理屋でも、
料理を邪魔しないという観点で、
大手の安酒か新潟系の淡い酒しか置いていないところが多い。
これは、せっかく料理をさらに美味しくさせる手段があるのに、
それを放棄してしまっていて残念なことだ。

以前、懇意にしている鮨屋のカウンターに
数種類の日本酒を持ち込み、
鮨のネタごとに相性を比べたことがあった。
持ち込んだ酒は、香川の悦凱陣、能登の宗玄、能勢の秋鹿など、
全ていい造りの純米無濾過生原酒を選択した。
平目などの白身の魚には宗玄のバランスのとれた旨みがよくあい、
江戸前穴子には切れのいい秋鹿が、
そして貝類には悦凱陣の骨太な旨みがとてもよく合った。
日本酒を料理との相性という観点で飲んでみると、
また新しい美味しい世界が広がる。
自宅や居酒屋でぜひ試していただきたい。


←前回記事へ 2004年9月6日(月) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ