“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第12回
焼きおにぎりの香ばしさ

宴会の食事としては、白いご飯も魅力的。
この場合は特に美味しいお米を使うことが肝心。
それも、羽釜か土鍋を使って炊いたご飯は美味しい。
お焦げも楽しめる。
麺類も最後にさっぱりしていい。
私自身蕎麦打ちもやるので、
最後は手打ち蕎麦で〆るということも多い。
夏の暑い時季には素麺なども最後にさっぱりして、
いい気分で食事を終えられる。

冬の鍋をやるときには、
ご飯でおじやとか、饂飩すきにするという選択肢もある。
この場合は、鍋の出汁の味を最後まで楽しめる。
今回は炭火を使っていたので、焼きおにぎりを作ることにした。
焼きおにぎりはそのまま食べても美味しいが、
これを八方出汁を使った茶漬けとするのが一工夫。
八方出汁は熱いものでももちろんいいが、
今回は冷たい出汁を熱い焼きおにぎりにかけて提供した。
ぬるめの出汁がまず口に当たり、
旨みのなかに焼きおにぎりの醤油の焦げた香りが溶け合っている。
おにぎりを箸でくずし、まず周囲のお焦げのぱりぱり感を楽しむ。
そして、おにぎりのなかのご飯が細かくくずれているところを
出汁と一緒にすすりこむ。
お米の甘さと出汁の旨みがさっぱりと合わさっていて、
とても軽快な味わいだ。

その後は、前菜の海胆とイクラと山芋の和え物が残っていたので、
これをこの焼きおにぎり茶漬けのなかに落とす。
すると、椀のなかから海の香りが漂ってくる。
お漬物を加えてもいい。
いろいろなバリエーションが考えられる。
焼きおにぎり茶漬けは単純な作り方にもかかわらず、
様々な楽しみ方ができる。
炭火を使った料理を出すときには、
その流れを邪魔せずに最後まで美味しさをひっぱる、
とてもいい〆方だ。
来客の皆さんにも大好評だったのはいうまでもない。


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