第63回
精気神と肝
精気神と五臓についてのお話を続けます。
今回は「肝」に関わる内容を
お話しようと思います。
肝という機能システムの主な働きは
「気」と「血」の流れを司ることです。
「気」の流れを司る働きとは、
肝が気を疏泄、通暢、昇発する働きを指します。
中医学では、
体外環境に対して反応する精神感情は
気の流れに影響すると考えます。
適当な精神感情にあれば
気の産生、流れ、作用等の生命活動は
正常に働きます。
逆に精神感情が過剰な状態にあれば、
生命活動を異常にする最大病因となります。
中医学では七つの感情をまとめて
「七情」と簡略して呼んでいます。
この七情とは喜、怒、憂、思、悲、恐、驚をいいます。
七情が過剰になると、
そのひとつひとつが
気の流れに個別の影響を及ぼします。
喜が過ぎると「気」の流れが遅れてしまう。
怒が過ぎると「気」の流れが上昇ばかりになってしまう。
憂が過ぎると「気」の流れが固まってしまう。
思(考え)が過ぎると「気」の流れが滞ってしまう。
悲が過ぎると「気」の流れがなくなって(消えて)しまう。
恐が過ぎると「気」の流れが下降ばかりになってしまう。
驚が過ぎると「気」の流れが乱れてしまう。
肝は精神感情を統轄し、
気の流れが安定するように司ります。
これを例えるならば、
一国の軍隊を司り外乱内患を防ぐ将軍のような存在です。
ですから、肝は「将軍の官」と呼ばれています。
肝は気の流れを司りますので、
気の産生(脾の消化吸収機能)と
血行、水液代謝を促進する作用もあります。
「血」の流れを調整する働きとは、
肝が持っている生命活動に必要な血量を
コントロールする機能を指します。
安静状態の時、肝は体内の余分な血を回収し貯蔵します。
労働や運動など活動状態の時、
肝は貯蔵している血を排出します。
医書『黄帝内経』の中に
「血気不和、百病乃変化而生」との記載があります。
これは病気を発生、転化する条件があるとすれば、
それは体内の気血が
和んでいない状態にあるはずとする考えです。
養生としては、精気神の質、量を整えるだけではなく、
精(血)気神の働きぐあいも調和させる必要があります。
従って精気神を調和させる肝を養うことは
軽視できないといえるでしょう。
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