東洋証券・深堀マネージャーが
中国企業と株についてわかりやすく解説します

第12回
中国 マイカー事情 その2

「中国の自動車政策」

(94年が原点の自動車産業)

ほんの8年前まで、中国政府の方針は
生産財としての商用車の生産拡大に力を注ぐことでした。
トラックなどの商用車に開発、生産の重点が置かれていました。
一方、乗用車については、
消費財として購入を厳しく制限してきました。

一般乗用車の買い手は、
ほぼ政府機関や公共団体国有企業に限定されていました。
「乗用車イコール公用車」だったのです。

ところが94年2月
「自動車工業産業政策」(国家発展計画委員会)が発表されました。
その内容は、まずもっとも重要な基幹産業の一つとして、
自動車産業を重点的に育成するという基本政策や
乗用車の消費構造を改め、
個人による自家用車の
購入促進政策などが明記されていました。
更に、上位企業の国内市場占有率が70%以上となるよう、
2ないし3社の主要企業を重点的に育成するなども明記されています。

この産業政策の転換により、90年代の中国の個人自動車需要は
年率約23.2%の伸びを示しました。
マイカー時代のプロローグとなりました。
注目すべきは2ないし3社の主要企業を重点的に育成ということです。
2ないし3社という対象企業は
「第一汽車」「東風汽車」「上海汽車」のことです。

ここで我見ですが、中国はその頃から既に自動車だけでなく、
各業界から3社程度のメガカンパニーを
育成する青写真(ビジョン)を持っていたということです。
10数年に亘るWTO加盟交渉、世界の桧舞台へ遅れて登場した分だけ、
世界中をお手本にしています。
したがって、世界で通用する企業育成のため、各業界で集約化を進め、
ビッグカンパニー、エクセレントカンパニーを
作り出そうとしているように思います。
すでに航空業界や通信業界においても
自動車と同じように構想を持っています。

話を戻します。
現在中国の自動車メーカーは2000社以上あります。
そのうち完成車メーカーが約110社。
エンジンメーカーが約50社。
部品メーカーは約1500社。
二輪車メーカーは約130社です。
2001年のグループ別自動車生産のシェアは、
3社プラス天津汽車で50.62%、販売シェアは50.84%です。
「産業政策」で打ち出された上位企業の
国内占有率70%以上にはまだ届きませんが、
時間の問題でしょう。
次に中国の自動車産業に欠かせないのが、
海外メーカーとの協力体制です。

ビッグスリーと呼ばれる各社の主要提携先ですが、
第一汽車、天津汽車はフォルクスワーゲン(独)とトヨタです。
主力車種は紅旗、アウディ、シャレートなどです。
本社は長春で従業員数は約10万人。
東風汽車はプジョー、シトロエン(仏)とホンダ、日産です。
主力車種はシトロエン、ブルーバードなどです。
本社は武漢にあり、従業員数は約10万人。
上海汽車は、GM(米)とフォルクスワーゲン(独)です。
主力車種はサンタナとビュイック・セイルなど。
本社は上海で従業員数は約6.4万人。

WTO加盟による輸入関税引き下げで、
中国の自動車メーカーが直面する競争圧力は一気に高まっています。
競争力を強化するためには、系列部品メーカーの育成など、
数多くの課題をクリアーしていかなければなりません。
しかし、これらの問題の解決策を包括的見出してくれるのが、
海外有力メーカーとの事業提携です。
第一汽車と包括提携した
トヨタのカンバン方式などはそのいい例だと思います。

マイカー時代を迎える中国の自動車企業にも
熱い視線が注がれています。
次回は中国の上場自動車メーカーをご紹介します。

当ページは、投資勧誘を目的として作成されたものではありません。
あくまで情報提供を目的としたものであり、一部主観及び意見が含まれている場合もあります。
個別銘柄にかかる最終的な投資判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

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