第430回
テストケースとしたい香港と同一化されると困る中国
国際的に、中国と香港が
一体化して見られれば見られるほど、
一番困るのは中国政府かもしれません。
何らかの意図があったかどうかはともかく、
日本の財務省が
中国と香港の外貨準備高の合算が
日本を上回ったことを発表したのも、
中国政府にとっては、もしかしたら
「余計なことをするな」と
言いたいことだったかもしれません。
というのも、
外貨準備高の有効利用はもちろんですが、
いろいろな意味で、中国にとって、
経済や金融が進んでいる香港は、
テストケースやサクセスケースを生み出すのに
便利な要素を備えているからです。
好例は、中国企業による海外での株式上場も、
まずはH株という形式によって、
香港で実現されたことでしょう。
H株は世界的にもかなり定着してきましたが、
将来的に中国本土市場と融合を考えたとしても、
香港というのは、中国にとって
いろいろと都合が良いといえます。
前回、CDR(中国預託証書)について、
若干紹介しましたが、
それ以外で注目されている制度としては
QDII(指定国内機関投資家)が挙げられます。
現在、中国公民による
海外での株式投資は認められていませんが、
一定の条件に合致した
中国資本の金融機関を通じて、
この一部を解禁していく、
その条件に合致した金融機関及び
一連の制度をQFIIといいます。
QFIIは、要は有り余った
中国の外貨を含む資金が海外、
特に当初の想定では
香港が有力視されていますので、
香港に資金が流れ込むことから、
香港相場、特に中国とのつながりの深い
H株やレッドチップの関連銘柄には
好材料となりやすく、
関連報道が出されると相場が動きます。
香港市場では原則的に
香港ドルでの取引になるはずで、
中国からの合法的な外貨の流出が、
しかも一定のコントロールのもとで
実現する制度となります。
だから、もしこの思惑を具現化することを考えると、
中国政府にとって、
海外から中国と香港が同体と思われるのは
好ましくない、ということになります。
しかし、中国の外貨準備高は
すでにこうした小手先のことでは
解決できないほど
巨大に膨れ上がっているように思いますし、
中国本土の相場がぱっとしない中で、
QDIIの導入そのものについても、
当局は慎重であり、
当面実現しそうにないのが
実際ではないでしょうか。
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