第5回
内部密告への対処は慎重に
中国で仕事をするにあたって、
私が今でもよく苦しむのは社員による密告です。
密告には大きくわけて、
外部に対するものと内部に対するものの2種類あります。
今日お話しするのは、
社員による社員に対する内部の密告です。
日本でもあるのでしょうが、
その数と内容が半端ではありません。
また密告による不正事項への対処が一層難しくなってしまうのは、
ある社員が密告した事実を
他の社員も皆知っている場合があることです。
給与を初め、日本では個々の胸の内に秘めておく事柄が
中国ではそうでない場合が往々にしてあります。
密告もその傾向があります。
ここで下手な対処をとったとしたら、
経営に対する不信感は急速に高まります。
それだけではなく、
社内の秩序が一気に崩壊する恐れだって出てきます。
私もこの密告への対処で多くの失敗をしました。
ある時は優秀な社員が会社を去っていきました。
またある時は見るからに社内のモチベーションが下がり、
数多くのチャンスを逃してしまいました。
今でも上手く対処できているとはとても言えませんが、
比較的に良い結果をもたらしていると言えるのが、
厳格な処罰です。
証拠があれば当然、
または限りなくクロだと判断した場合は、
ちょっと厳しいかなと思うぐらいの罰則を
可能な限り敏速に決定します。
当然、不正の内容によっては、
中国の労働法に則って解雇の手続きを行うこともあります。
不正をした社員から、
色々な脅しを受けることもありますが
怯んではいけません。
罰則が決まれば、
その過程を詳しく記した社内通知を作成し、
実名入りで全社内に一斉配布します。
この方法を意識的に取るようになってからは、
かえって社内の雰囲気が良くなったように思います。
ただし副作用もあります。
その副作用が発生した時に適切な対応を取る事ができず、
それが原因で中国が嫌いになり
終には日本に帰ってしまったH君。
日本人だからという甘えで、
一方的に耐えろといった私が誤っていました。
君が残してくれた経験を決して無駄にはしません。
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