第4回
最初が肝心〜孫子の兵法〜
社員の皆も緊張した面持ちで話しに聞き入っています。
何となく話の想像はつきます。
恐らく私が成都へ赴任することになった経緯などを
話しているのでしょう。
すると突然、社員からどよめきがあがりました。
皆一様に私を見ています。
これも想像がつきました。
前任者が
「ちなみに後任者は日本人で、しかも中国語はできません」
と言っているのだなと。
それから約一週間、あっという間に引継ぎが終わり、
一人ぽつんとマネージャー室に取り残されました。
一方、ドアの外では事務所が日に日に賑やかになっていき、
時には奇声に似た声まで聞こえます。
私もたまりかねて度々注意し、
怒った顔は万国共通なのか、
一時は事務所も静寂を取り戻します。
しかし、それも長くは続きません。
ちょうどその様な時、
邱先生から北京に来るようにとの連絡が入りました。
成都に来てから1ヶ月あまりの頃です。
北京につくと邱先生がニコニコしながら
「どう?仕事はできそう? みんなちゃんと君の話し聞く?」
とおっしゃいました。
私は何と答えたら良いのかわからず、
「まだまだ時間は掛かりそうですが、何とか頑張ってみます。」
と言いました。
すると次に
「君、孫子の兵法読んだことはあるの?」
と聞かれました。
「ありますが、、、」と答えると、
上田尾君のコラムでも最近紹介されていましたが、
孫子の兵法のなかで、
皇帝が自身の妾を使って
孫子に兵法を披露させた時の物語を話しだされました。
孫子が皇帝の妾を兵士と見立てて指示をするのですが、
妾達は一向に真面目に動こうとはしません。
それを見て皇帝も笑っています。
そんな時、孫子は
皇帝が愛する二人の妾を突然刀で切り殺したのです。
驚いた皇帝を制止、引き続き孫子が指示を出すと、
今度は見違えるようにきびきびと孫子の指示に従い、
結果としてすばらしい兵法を披露することができました。
この話しを邱先生がされた後、私に
「もし明らかに不誠実な幹部社員がいたら、首を切りなさい。
そうすれば他の社員も少しは君の言うことをきくでしょう」
と言われました。
私がその後、すぐに実行して
見違える変化が社内に起こったのは
詳しく述べる必要もないでしょう。
|