第106回 生前贈与のための新相続税制−中級編
新制度で贈与された自社株、相続税「自社株特例」の対象に
未公開会社であっても優良企業である場合には、
その株式の価値(相続税評価額)は
意外と高額になってしまうようです。
未上場株式たる自社株は換金しづらい財産ですから、
相続財産の大部分が未上場株式であるような場合には、
自社株を相続した後継者たる子供は
納税資金の確保に苦慮することが想定されます。
このような未上場会社における事業承継に配慮して、
相続税では自社株の評価額のうち一定割合を
相続税の課税価格から減額する
「特定事業用財産の特例」を設けています。
具体的には、被相続人が有していた未上場株式のうち
発行済株式の総数の3分の2以下に相当する部分の価額について、
3億円を限度として、その価額の10%相当額を
相続税の課税価格から減額することができます。
但し、この特例の適用を受けるためには
次の1から4の要件を満たす必要があります。
1.対象会社要件
発行済株式の時価総額が20億円未満であること
2.被相続人要件
相続開始直前に被相続人とその同族関係者が
発行済株式総数の2分の1超を保有していること
3.相続人要件その1
株式を相続等により取得した者(被相続人の親族)が
申告期限まで引き続きその株式をすべて所有していること
4.相続人要件その2
株式を相続等により取得した者が
相続開始時に発行済株式総数の5%以上を所有し、
申告期限において役員としての地位を有していること
この特定事業用財産の特例は、前回ご説明した
「小規模宅地等の評価減の特例(第105回参照)」と異なり、
新制度による贈与財産についても
適用が認められることになっています。
すなわち、新制度により生前贈与された未上場株式は、
相続発生時において、贈与時の価額で
相続税の計算に持ち戻されることになりますが、
相続税の計算上、
当該未上場株式について上記特例を適用できます。
したがって、株価の上昇が見込まれる、
優良な未公開会社の株式については
安心して新制度をご利用ください。
なお、新制度を利用して贈与を受けた株式について相続の際に
上記特例の適用を受けたい場合には、
贈与の申告の際に贈与税申告書に
この特例の適用を受ける旨を記載した書類等を
添付しておく必要があります。
執筆:税理士法人山田&パートナーズ 税理士 山本武尊
監修:公認会計士 山田淳一郎
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