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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第92回 生前贈与のための新相続税制
「マイホーム取得資金の贈与」旧制度と新制度どっち?(その2)

前回に引続き、
今回は相続税がかかるご家庭のケースをご説明します。

【相続税がかかるご家庭】

相続税がかかるご家庭は、
原則として新制度ではなく
旧制度を選択するのがよいと思われます。
なぜならば、新制度を選択すると
相続税軽減対策の観点からは
ほとんどのケースにおいて逆効果になるからです。

1.贈与を受ける現金が550万円以下の場合
  旧制度を選択して贈与を受けることがよいでしょう。
  贈与金額550万円以下であれば贈与税はかかりません。
  また、贈与によって親の相続財産を減らすこともできますので
  相続税軽減対策として有効です。

2.贈与を受ける現金が550万円超1,500万円以下の場合

(1)旧制度の適用方法
   旧制度では、贈与金額1,500万円まで贈与税が軽減され、
   かつ、贈与によって親の相続財産を減らすことによる
   相続税軽減効果もありますので、
   まずは贈与金額全額について旧制度の選択を検討します。

   但し、相続税が高税率でない場合には、
   550万円だけ旧制度を適用して子供が贈与を受け、
   550万円を超える部分については贈与せずに
   親の資金のままマイホームを建築して
   共有名義にしておくことも一法です。

   なお、共有名義にしておくと、
   将来マイホームを売却した時の利益や
   損失に関する税金特例を
   親と子供それぞれが受けられる
   (但し親と子供が同居している場合)
   というメリットがあります。

(2)新制度の選択は相続税軽減対策としては逆効果、注意
   新制度を選択すると相続税軽減の観点からは
   逆効果になることが多いので、選択しないほうが賢明です。
   詳しくは次の3(1)でご説明します。

3.贈与を受ける現金が1,500万円超の場合

(1)新制度の選択は相続税軽減対策としては逆効果、注意
   新制度を選択した場合、
   マイホーム建築資金として贈与を受ける金額は
   3,500万円まで贈与税ゼロとなりますが、
   その贈与金額は相続時に本来の相続財産に加算されます。

   例えば、新制度を選択して
   3,500万円の現金贈与を受けて
   子供がマイホームを建築し、
   その20年後に親が亡くなった場合で考えてみましょう。
   建築して20年が経過したマイホームの時価は
   3,500万円よりも大幅に下落していると予想されますが、
   それでも贈与金額3,500万円が相続財産として
   加算されてしまいますので
   相続税軽減対策としては逆効果となるわけです。

(2)親名義でマイホーム建築することは相続税軽減対策になる
   上記(1)のケースで、3,500万円のうち
   旧制度を利用できない1,500万円超の部分、
   すなわち2,000万円を子供に贈与せず
   親名義でマイホームを取得したとします。

   20年後に相続が発生した場合、
   親の名義で取得した建物の時価
   (固定資産税評価額相当額)は
   2,000万円を下回りますので、
   相続税軽減対策の観点からは
   親が建築して子供が住むという方法が有効です。

(注)新制度を適用した贈与では、
   相続税の対象に取込む金額はあくまでも贈与時点の金額です。
   したがって、贈与を受けた資金で
   マイホームの土地も一緒に取得し、
   その後その土地が大幅に値上がりしたときには、
   土地値上がり分が相続税の対象にはならないという点で
   新制度の適用が有利となるケースもあります。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


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