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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第90回 生前贈与のための新相続税制
生前贈与の段取りと証拠の残し方

「贈与」という行為は民法で規定されています。
民法では、贈与契約は必ずしも書面による必要はなく
当事者の合意があれば口頭でも有効としています。

しかし税務上の観点からは、
贈与した事実という証拠を残しておかないと
後々問題になることも十分考えられます。
したがって、贈与の際には
「贈与契約書」や「財産の所有権移転に伴う書類」など
客観的に事実を証明できる資料を
作成・保管しておくことが大切です。

以下に、贈与する財産の種類ごとに
贈与手続や留意点をご説明します。

1.現金
  現金は手渡しをすると一切証拠が残りませんので、
  子供や孫の預金口座に振込みをして
  通帳に入出金の事実を残します。
  そして、その出金の事実が記帳された通帳を
  振込依頼票の控えとともに保管しておきます。

2.預貯金
  預金通帳の名義を書換える方法もありますが、
  預金口座を解約したり一部出金した資金をもって
  子供や孫名義の預金口座を作る方が比較的手続きは簡単です。
  この場合、現金のケースと同様に
  振込み等の事実を残しておくことはもちろんですが、
  子供や孫名義の通帳や印鑑を贈与をした
  父母や祖父母が保管していると、
  単に子供や孫の名義を借りているだけで
  贈与の事実はないと認定されるおそれがあります。
  したがって、贈与の際には
  通帳や印鑑も子供や孫に渡しておくべきです。
  もし、子供や孫が幼い場合には
  他方の親に預ける方法でもよいでしょう。

3.株式
  上場株式等については、
  信託銀行等を通じて名義書換手続きを行い、
  手続書類一式を保管しておきます。
  また、その際には配当金の受取口座の変更も
  併せて行っておく必要があります。
  自分や親族がオーナーである未上場会社の株式については、
  株券を発行し、かつ、名義書換手続きを行い
  会社の株主名簿も変更するとともに、
  株式の贈与契約書を作成して
  その契約書に確定日付
  (契約書が作成された日付を公証役場で証明してもらう制度)
  をとっておくと、
  贈与の事実及び日時が客観的に証明できますので有効です。
  また、贈与後の法人税の申告で
  「同族会社の判定に関する明細書」を作成する際に、
  変更後の株主構成で記載することを
  失念する例が多いのでご注意ください。

4.不動産
  不動産の所在地を管轄する法務局に登記の申請をします
  (通常は司法書士に依頼します)。
  登記が完了すると登記済証(権利証)が交付されますので、
  登記申請書類一式とともに保管をしておきます。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


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