プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第75回 生前贈与のための新相続税制
新制度選ぶ?選ばない?
「相続税がかからない家庭」の基本的考え方

相続時精算課税制度は選択制です。
選択をするか、しないかの判断ポイントは、
贈与者に相続が発生した場合
相続税がかかるかどうかです。

今回は相続税がかからないAさん
(66歳)のケースで考えてみましょう。
Aさんの家族は、Aさん、妻、
長男(35歳)、長女(30歳)の4人。
財産は7,000万円で、今後も大きな変動はないとします。
このAさんに万一のことがあっても、
財産が相続税の基礎控除
(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数、
このケースでは相続人が妻、子ども2人の計3人のため、8,000万円)
以下のため、相続税はかかりません。

このケースにおいて、長男は
Aさんから2,000万円の贈与を受け新制度を選択します。
2,500万円までの贈与ですから、
贈与時に贈与税はかかりません。

その後Aさんに相続が発生した場合、
Aさんの相続財産5,000万円に、
新制度による贈与額2,000万円(贈与時の価額)を加算した
7,000万円が相続税計算上の財産額になりますが、
この財産額が相続税の基礎控除以下のため
相続税はかかりません。

つまり、相続税がかからないご家庭の場合ですと、
新制度を選択すれば2,500万円
(自宅購入資金の贈与は3,500万円)まで贈与しても、
贈与時に贈与税がかからず、
相続時にも相続税がかからないわけですから、
税金のことは一切心配することなく、
大いに新制度を活用してよい、といえます。

ただし、早目に財産を渡し過ぎて
自分が困ることのないように。
また、2,500万円
(自宅購入資金の贈与は3,500万円)を超える贈与をして、
その超える部分に対して20%の贈与税を納付したとしても、
相続時に相続税がかからなければ、
相続税の申告をすることにより
納付済みの贈与税は還付されますので、
損することはありませんから
特定の子供にまとめて早めに渡したいと考える場合も使えます。
但し、民法に定める遺留分を侵さない程度にとどめておいた方が
無難だと思います(この点については第77回を参照下さい)。

このケースにおける注意点は、
子どもは新制度を適用する最初の年(父・母別々)は
その翌年3月15日までに
新制度を選択する旨の届出書を添付して贈与税申告を行い、
その後に新制度を選択した贈与者から
贈与を受けた場合も必ず贈与税申告を行うこと、
そして、贈与者は将来の遺産分割に配慮して贈与を行うことです。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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