プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第64回 生前贈与のための新相続税制
新制度、贈与者(父・母)が亡くなった時の相続税の精算

子どもが親から新制度を利用して財産の贈与を受け、
その後に贈与者である親が亡くなった場合の
相続税の計算についてご説明します。

新制度を利用して財産を贈与した場合には
所有権は実際に親から子どもに移転するのですが、
税金計算上は仮移転として考えます。
つまり、新制度を利用して贈与した財産は、
子どもの所有であるにもかかわらず、
相続税の計算時には
贈与者である親が所有していた本来の相続財産に加えて
計算するというわけです。

なお、新制度を利用した贈与にかかる贈与税は、
「相続税の前払い」という位置付けになります。
この贈与税は、贈与を受けた財産と
親の相続財産を合計して計算した相続税から
控除できるのですが、
もし控除しきれない金額がある場合
(納付すべき相続税より
 既に支払った贈与税の金額が多い場合)には
その金額が還付されます。

設例を使ってご説明しましょう。
<設例>
1.前提
  
父が亡くなった、相続人は子ども1人
   (基礎控除額6,000万円)

  父の相続財産の価格 2億円
  新制度を利用して生前贈与した財産の価格 1億円
  贈与に伴う贈与税額 1,500万円(注)

  (注)贈与税額は2,500万円を超える部分に
     20%かかっていますので、
     (1億円−2,500万円)×20%=1,500万円
     となっています。

2.納付すべき相続税額の計算

 (1)贈与者である父の相続財産に新制度を利用して
    生前贈与した財産の価格を上乗せし、
    相続税の課税価格を計算します。
    2億円+1億円=3億円

 (2)子どもの相続税額を計算します。
    (3億円−6,000万円)×40%−1,700万円
    =7,900万円

 (3)(2)で算出した相続税額から
    生前贈与に係る贈与税額を控除して、
    実際に納付すべき税額を計算します。
    7,900万円−1,500万円=6,400万円
 
このように、生前に子どもが贈与を受けた財産及び
その贈与に伴う贈与税は、
贈与者(父)の相続時に一体化させて
納付すべき相続税の計算をすることとなります。
生前贈与にかかる贈与税を相続時に精算することから、
「相続時精算課税制度」と言われます。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木 寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


←前回記事へ 2003年10月31日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ