第57回 生前贈与のための新相続税制
新制度、選ぶ・選ばないは自由
でも選択したら取り消しは不可
前回までで相続税・贈与税の基本的な考え方と
新相続税制を使った場合の税効果について
お話してきました。
今回から新相続税制の各論の説明をします。
平成15年税制改正により、
新相続税制が導入されましたが、
基礎控除110万円、超過累進税率適用といった
従来の贈与税制度がなくなるわけではありません。
今後は新相続税制と従来の相続税・贈与税制度の
二つの制度が併存し、贈与があった場合には
受贈者(子)がこれら二つの制度のうち、
どちらの制度を適用するかを自由に選択できるのです。
しかも、新制度の適用の選択は
贈与者ごとにできますので、
例えば、父から受ける贈与は新相続税制を選択し、
母から受ける贈与は
従来の相続税・贈与税制度を選択するといったことも可能です。
但し、新制度の選択後は
その贈与者(親)との関係では
相続発生時まで新制度の継続適用が強制されます。
即ち、一旦新制度を選択してしまうと、
その後に新制度の適用を取り消したくてもできません。
ですので、新制度の適用を受けようと考えている人は
その選択の際に、将来の相続を見据えて
新制度を適用したほうが得なのか、
それとも適用しないほうが得なのかを
十分に検討する必要があります。
親の財産が相続税の基礎控除額以下で
相続税がかからないことが予想されるような場合には、
新制度を採用して従前に納税していた贈与税(税率20%)が
相続の際に還付してもらえる、
即ちトータルでみると
税負担なしで生前に財産を子に移転できます。
早目の移転ができる点では
新税制の適用が有利といえますが、
相続税だけで考えますと、
新制度でも従来の制度でも相続税はゼロ、つまり同じです。
しかし、親が資産家の場合には、
新税制を適用した場合と適用しなかった場合とを
比較検討しなければなりません。
この場合それぞれの制度につき
贈与税・相続税の税負担、
生前贈与による財産移転後の経済効果、
株や不動産など時価が変動する財産の
将来価値の増減等を考慮した
税効果シミュレーションを行い、
有利・不利を判断して選択することになります。
このように、私たちは新制度導入に伴い、
贈与時に複数の選択肢を得ることになりましたが、
自分が決めた選択の結果に
責任をもたなくてはならなくなりました。
執筆:税理士法人 山田&パートナーズ税理士 山本武尊
監修:公認会計士 山田淳一郎
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