プロが教えます!公認会計士
山田淳一郎さんのトクする税金の話

第52回 生前贈与のための新相続税制
新制度理解のために
「贈与税の仕組み(2) ― 累進税率は急カーブ」

他の人から無償でもらった財産の合計額が
1年間で110万円を超えると、
超える部分に贈与税がかかります。
贈与税は、贈与された財産額が多ければ多いほど
税率が高くなる仕組みになっており、
この仕組みを累進税率といいます。

下の表のとおり、贈与される財産額が多くなるほど、
財産に対する税額の割合(税負担率)が高くなります。
したがって、同じ1,000万円を贈与するにしても、
1度に1,000万円贈与してしまうと
231万円の贈与税がかかりますが、
例えば200万円ずつ5年に分けて贈与すれば
低い税率が適用されるため、
贈与税は合計でも45万円(9万円×5回)となり、
税負担が軽くてすみます
(但し、200万円ずつ5年で
 合計1,000万円あげるとする約束のもとに
 5回に分けても約束が1回ですから、
 この場合には一度の贈与であるとして
 約束した年に1,000万円に対する贈与税がかかります。
 上記の説明は、今年も我々二人とも元気だ、
 今年も200万円あげよう、という具合に、
 贈与がそれぞれ独立して行なわれている場合です)。

<贈与財産額に対する贈与税および税負担率>
贈与財産額(110万円控除前)(a) 贈与税(b) 税負担率(b/a)
200万円 9万円 4.5%
500万円 10.6% 10.6%
1,000万円 23.1% 23.1%
2,000万円 36.0% 36.0%

贈与税の税率は相続税と同様に10%〜50%ですが、
累進税率のカーブは相続税よりも急です(下図参照)。
累進が急であるということは、
同じ財産額に対する税負担が
相続税よりも贈与税の方が重いということです。

例えば、相続税では最高税率である50%が適用されるのは、
第49回【ステップ1】でお話した
「相続税の計算上仮に按分計算した各法定相続人ごとの取得金額」
が3億円を超えた部分ですが、
贈与の場合には贈与財産が1,110万円を超えた部分から
最高税率である50%で贈与税がかかります。
つまり、多少まとまった贈与をしようとすると
すぐに最高税率になってしまうということです。

このように相続税に比べ贈与税の税負担が重い理由は、
贈与税が相続税を「補完」するために
作られた税金であるためです。
もし、贈与をしても税金がかからない、
又は相続税よりも税負担が軽いとしたら、
財産のある人は生前に財産を全て贈与してしまい
相続税がかからないようにしようと考えるでしょうから、
相続税の存在意義がなくなってしまいます。
そこで、相続税の取り漏れを防ぐために
贈与税という税金を作り、
税負担も相続税より重くなるように設定されているのです。

以上が贈与税の課税の原則的取扱いであるのに対して、
選択すれば例外として認められる贈与税の制度として
定められたのが「新相続税の制度」です。

<贈与税の税率構造図>

執筆:税理士法人 山田&パートナーズ税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


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