第47回 生前贈与のための新相続税制
「新相続税制」誕生のわけ
平成15年度の税制改正で
「新相続税制」が創設された理由は、
生前贈与しやすい税制を作って、
次のようなケースにおける
企業の円滑な事業承継を後押しするためです。
70歳の父親と40歳の子供がいます。
昔、父親が設立した会社があり、
現在は子供が代表取締役として
実質的にその会社を切り盛りしていますが、
株の大部分は今でも父親が持っています。
子供は、父親から実質的に会社を任された後、
一生懸命努力して会社を立派に育てましたので
会社の株価は上がったのですが、
その株のほとんどを父親が所有していたため、
父親の相続の際には何億円もの相続税のために
非常に苦労することになりました。
父親は、生前において
子供に株を贈与することを検討しましたが、
贈与税の負担が重過ぎて実行できませんでした。
贈与税は累進税率という仕組みで、
贈与財産額が多ければ多いほど税率が高くなります。
たとえば、1,000万円の財産を贈与した場合の贈与税は
231万円であり、
5,000万円の贈与を受けた場合の贈与税は
なんと2,220万円にもなります。
もし、後継者である子供が
「相続でこんなに苦労するなら、
会社を大きくしないほうが良かった」と考えてしまうならば、
相続税(企業の事業承継)が
日本の経済成長を阻害することになりかねません。
そこで、事業承継のための生前贈与のしやすい税制として、
今回、「新相続税制」が創設されたのです。
この制度を利用すると、
例えば株価が高くなってしまう前に
この制度を活用して生前贈与しておけば、
相続発生の際には生前贈与時の株価で
相続税に取り込み精算課税されることから、
税金が少なくて済むので助かるわけです。
つまり、後継者にとって一番いいタイミングで
事業承継ができるようになります。
また、新制度は経済の活性化や
消費促進の観点からも歓迎されています。
若い世代は、持ち家や車など、
欲しいものはあるのにお金がありません。
そこで、新制度を利用して
高齢者の財産が早い時期に次世代に移転すれば、
その贈与された財産を消費に回したり
有効活用することにより、
経済活性化につながることが期待されるからです。
執筆:税理士法人 山田&パートナーズ税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎
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