第37回
緊急投資優遇税制,平成15年・16年に気をつけるべきこと
1.「緊急投資優遇税制」の適用対象となる銘柄について、
平成15・16年は売買はしない方:注意すべき点はありません
平成13年11月30日から平成14年12月31日までの間に購入した
上場株式等を、平成15年・16年の2年間はじっと抱えたまま、
同じ銘柄を売ったり買ったりはしないという方は、
緊急投資優遇税制の適用に関して
特別に気を付ける点はありません。
「平成17年になったらドンドン上がれ!」と祈るばかりです。
2.「緊急投資優遇税制」の適用対象となる銘柄について、
平成15・16年も売買する方:投資行動にご注意ください
平成15年・16年もタイミングを見て、
緊急投資優遇税制の適用対象となる銘柄
(平成13年11月30日から平成14年12月31日までの間に
購入した上場株式等)と同じ銘柄を
売ったり買ったりする個人投資家の方はご注意下さい。
売ったり買ったりしているうちに、
緊急投資優遇税制の適用対象となる株式が
消えてなくなることがあるためです。
具体例で説明しましょう。
期間
/
ケース
|
平成13年
11月29日以前 |
優遇措置対象購入期間
平成13年11月30日〜
平成14年12月31日 |
保有期間
平成15年〜平成16年 |
優遇措置対象売却期間
平成17年〜平成19年 |
ケース1 |
− |
1株購入 |
− |
1株売却 |
ケース2 |
− |
1株購入 |
1株購入 |
1株売却 |
ケース3 |
1株購入 |
1株購入 |
1株売却 |
1株売却 |
ケース4 |
1株購入 |
1株購入 |
− |
1株売却 |
ケース5 |
− |
1株購入 |
1株購入・1株売却 |
1株売却 |
<ケース1>非課税適用あり
優遇措置対象購入期間
(平成13年11月30日〜平成14年12月31日)に
A銘柄を1株購入し、
平成15〜16年はじっと保管しておき、
優遇措置対象売却期間(平成17〜19年)に売却したケースです。
このケースは、もちろん優遇措置対象売却期間に売却した1株は
「購入対価1,000万円まで売却益非課税」の適用があります。
<ケース2>非課税適用あり
優遇措置対象購入期間に1株、
その後平成15〜16年にさらに1株買い増しし、
そして優遇措置対象売却期間に1株売却したケースです。
税金ルールでは、「先入先出法」といって、
同じ銘柄を複数所有している場合に
その一部を売るときは古いものから順番に出ていくと考えます。
すなわち、優遇措置対象売却期間に売った株式は、
A銘柄のうち最も古いもの
(優遇措置対象購入期間に購入した1株)であるため、
非課税の適用があります。
<ケース3>非課税適用あり
優遇措置対象購入期間に入る前にA銘柄1株購入していました。
その後優遇措置対象購入期間内にさらに1株買い増しし、
平成15〜16年にそのうち1株を売りました。
そして優遇措置対象売却期間に残りの1株を売却したケースです。
まず、平成15〜16年に売却した1株は
原則通り「先入先出法」で考えますので、
優遇措置対象購入期間に入る前に
購入した株を売ったことになります。
ということは、優遇措置対象売却期間に売った株は、
優遇措置対象購入期間に購入した株ですから、
非課税の適用を受けることができます。
<ケース4>非課税適用あり
優遇措置対象購入期間に入る前、
すなわち平成13年11月29日以前にA銘柄1株購入していました。
その後優遇措置対象購入期間内にさらに1株買い増しし、
平成15〜16年はA銘柄2株をじっと持っていました。
そして優遇措置対象売却期間に2株のうち1株を売却しました。
このケースに「先入先出法」を当てはめてしまうと、
優遇措置対象売却期間に売った1株は
「平成13年11月29日以前に購入した株式」となって
非課税の適用が受けられなくなります。
古くから持っている株(平成13年11月29日以前に取得した株)を
全部売り切った場合でないと
優遇措置対象購入期間に買った株を
売ったことにはならないのでは、
せっかく作った緊急投資優遇措置も機能しません。
そこで、このように
優遇措置対象購入期間の前から所有していた銘柄を、
優遇措置対象購入期間内に買い増ししたケースにあっては、
「先入先出法」ではなく、
優遇措置対象売却期間に売った株式は、
まず「優遇措置対象購入期間」に購入した株式から
充当することとなっています。
言い換えますと、優遇措置対象売却期間直前に
所有している株式について、
『優遇措置対象購入期間に入る前
(平成13年11月29日以前)に購入した株』と、
『優遇措置対象購入期間に購入した株』両方ある場合には、
優遇措置対象売却期間に売却した株はまず
『優遇措置対象購入期間に購入した株』とする特別ルールです。
<ケース5>非課税適用なし
優遇措置対象購入期間に1株、
平成15〜16年にさらに1株買い増しし、
その後平成15〜16年に1株売却し、
優遇措置対象売却期間に残りの1株を売却したケースです。
このケースは、原則通り「先入先出法」で考えます。
すなわち、平成15〜16年に売ったのは
優遇措置対象購入期間に買った株であるため、
優遇措置対象売却期間に売った株は
「平成15〜16年に買った株」となり、
非課税の適用は受けられません。
<気をつけるポイント>
優遇措置対象購入期間内に購入し
緊急投資優遇措置の適用を受ける可能性がある銘柄について、
(1)平成15〜16年に売却しないケース、
(2)平成15〜16年に売却するケースに分けて
ポイントを整理しましょう。
(1)平成15〜16年に売却しないケース
気を付けることはありません。
優遇措置対象売却期間直前に所有しているA銘柄のうち、
古い順番に売ったと考えますが、
優遇措置対象購入期間に入る前
(平成13年11月29日以前)に購入した株がある場合には、
特別ルールで平成17〜19年に売った株は
「優遇措置対象購入期間」に買った株である、
としますので、予定通り非課税適用を受けることができます。
(2)平成15〜16年に売却するケース
気を付けないと、
非課税の適用を受けられなくなることがあります。
平成15〜16年の売却については、
原則通り「先入先出法」によりますから、
その銘柄を次々に売り進めていくと、
「優遇措置対象購入期間に買った株式」を
平成16年末までに全部売り切ってしまうことになります。
平成17年初に所有しているA銘柄は全部
「平成15〜16年に買った株」となってしまいますと、
平成17〜19年に売った株式について
一切の非課税適用はありません。ご注意下さい。
執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎
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