これは冗談としても、どうしても国がお金を欲しがるなら、国民の誰もが使うものから一番痛がらないですむ方法で税金を召し上げるよりほかない。そのためには斜陽化する産業に課税するわけにはいかない。食料品や医療に税金をかけてもいけない。その点、いつの時代でも成長している業種があり、年々生産の伸びている商品がある。今でいえば、自動車とガソリン、コンピュー夕、ワープロ、ファックス、コピー機といったものが考えられる。こういう商品に一○%も蔵出し税を払ってもらえば、当面必要な財源の半分か、三分の一はすぐにも確保できる。
あとは資産課税という手が考えられる。日本は世界でもアメリカを抜いて一人あたり GNP が世界一の金持ち国になった。その日本の国家財政が大赤字になって、台湾の足腰の強さにも及ばないというのでは力ッコがつかない。資産課税というと、すぐにも土地譲渡所得税とか、株式のキャピタル・ゲイン課税とか、相続税を連想するが、物が動く過程で重税をかけると、動きがとまってしまう。動きがとまると、供給不足が起って価格が高騰する原因になる。むしろ売買にブレーキをかけず、取引税を安くした方が税収はうんとあがる。たとえば、香港の不動産の登録税は売買価格の二・五%にすぎないが、株を売買するように激しく不動産を売買するので、政府の収入は莫大なものになっている。だから動きに税金をかけるより、保有していることに課税するほうがおそらくずっと効果があるだろう。日本の不動産は、日本が金持ちになっていく過程で激しい値上がりをしたので、時価に対して課税をするといった極端なことは避けるべきだが、ちょっと固定資産税を値上げしただけで、財源の不足分を補うことくらいは簡単であろう。もともと増税はどこの国でも怨嗟の的であるから、非難の的になるのは必定だが、それでも税金が欲しいというのであれば、痛い思いをさせないでうまくとる配慮が必要なのである。
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