第五章 サービス先進国日本の世界戦略
       茶道にみるサービス業の地位と水準

メイド・イン・ジャパンの商品を支える日本人のサービス精神
付加価値はすぐれた経営と良質の労働力によって創り出される。日本人はたまたまそうした素質を持ち合わせており、それに磨きをかける努力をしてきたので、短いあいだにみるみる巨大な富を築きあげ、世界で一、二を争う金持ち国にのしあがってきた。
日本人が最も力を入れ、才能を発揮したのは工業生産の分野においてである。鉄鋼、造船、自動車、家電製品、石油化学、コンピュー夕といったあらゆる分野を手がけ、世界中の人々が欲しがる物を、品質に比して納得のできる値段で供給してきたので、世界中からお金を集めることができるようになった。お金の余裕のあった国は日本から物を買いすぎて日本にお金を持っていかれたし、お金がないのに日本から物を買いすぎた国は日本に借金ができて、日本人がその国の財産を次々と手にいれるのを黙ってみているよりほかなくなった。
アメリカのように、年間五○○億ドルも六○○億ドルも対日赤字ができるからといって、「そのお金は国債以外の投資には使わないでください」と用途指定をすることはできない。
国債を買っていたのでは、為替差損で損失を蒙ったり、インフレで目減りが力バーできないとわかれば、日本人は国債を買うのをやめて不動産を買ったり、M&Aで事業体そのものをも買うようになる。現にそういう動きが少しずつ出てきている。数年来貿易摩擦だったのが、この次は資本摩擦に変るはずだから、両者の争いはもっとエスカレートしたものになるはずである。
そうした日本人の世界戦略をみて、それに反発したり、反感を抱いたりする動きもあるが、日本人に学び、日本に負けないように自分たちの工業生産を改善していこうという真面目な動きもみられる。そうした人々がまず目をつけるのは日本の工業生産であり、企業経営のやり方である。終身雇用制とか、年功序列給などは、外国人からみたら一番目につきやすい日本的な制度であるが、私はそういう制度よりも、長いあいだに自然にできあがった人問関係とか、社会習慣とか、周囲に対する配慮とかいったことが大切だと思う。たとえば、メイド・イン・ジャパンの商品に人気が集まったのは、「良質で低廉」というところから始まっているが、「消費者の立場に立った商品づくり」とか、「徹底的なアフター・サービス」といった陰の部分が下支えになっている。そうした資質はどこから来ているかというと、日本人の「細かい心遣い」、日本人の「サービス精神」、日本人の「完壁主義」と深いかかわりがある。そういうところまで追求していくと、それはもはや制度や組織の範晴をこえて、国民性とか、文化の問題になってしまう。大抵の分析はそういう形而上的なところまでは追求していかないものだが、付加価値を生み出す諸々の要素を蹴載していくと、サービスとか、サービス精神といったところにぶつかってしまうのである。
←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ