こうしたサービスぶりは、注文した機械の納期すら約束どおりに守らないアメリカのメー力ーの思いも及ばないことであるから、勝負は自ずから決まってしまう。しかし、どんな至れり尽せりのサービスでも、サービスを必要としない製品にはかなわない。工作機械はともかくとして、一般家庭で使用される家電製品とか音響機器は、使っている途中で故障を起したら、すっかり不愉快な気分になるし、サービス・セン夕ーに持っていったり取りにいったりすると、えらい手間がかかる。自動車やオートバイのような走るものになると、途中でエンコしたのを引っ張りにいくだけでも大変である。もし故障率の低い完成品をつくることができたら、これ以上、消費者に信頼される道はないに違いない。
世界に販売網を拡げるにつれて、日本のメー力ーが選んだ最良のサービスは、まさに故障率を皆無に近づかせることであった。しかし、そのためには品質管理を徹底的にやらなければならないし、また製品を組み立てる以前にパーツの不良品率を激減させなければならない。アメリカのようにパーツの不良品率が二%以下なら合格という基準は、日本人にとっては、三十年も前の話である。さきにもふれたように、下請けからの納品に対する検査は免除されているが、それは下請けの品質管理が徹底しており、不良品率がppmの単位、すなわち百万個に一個という確率まで引き下げられてしまったからである。もちろん工場でつくられた品物にppmの不良品しか発生しないということではない。下請けメー力ーのほうが予め不良品をふり落してしまうので、不良品率がppm単位まで落ちてしまうということである。
故障とは、大抵がパーツの故障であるから、パーツの故障率が皆無に近づけば、故障はほとんどなくなってしまう。自動車がエンコを起している光景は日本では滅多に見られなくなったが、たまに自動車を人が押しているのを見ると、ほとんどが外車である。なるほどこれでは、アメリカやヨーロッパで日本車が人気を呼ぶのも無理はないだろう。日本の企業は大から小まで、品質管理には異常に熱心である。どこにもそういう気風が漂っている。QC運動は戦後、日本の工場生産の指導にあたったアメリカのデミング博士が遺したものであるが、アメリカでは知られていなくとも、工業に従事している日本人でデミングの名を知らない者はいない。デミング賞は毎年、品質管理に努力して最も成果をあげた企業に対して授与される。企業にとってデミング賞をもらうことは総理大臣から褒められるよりもっと名誉なことであるから、そのために企業をあげて目標達成に努力する。それがまた企業の名声につながり、世間の信用を博するきっかけにもなるのである。

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