もちろん、パーツ・メー力ーのなかにも独自の技術をもち、各メーカーと対等の立場に立って商品の提供をしているところがある。また一社だけでは、注文が不足するために、特定企業の系列下に入れることができないでいるケースもある。そうした例外はあるけれども、日本の大メー力ーは、それぞれの下請けを傘下に擁し、ピラミッド型の産業体としてそれぞれの王国を形づくっていることが多い。会社のなかも社長と社員によって成り立っているように、親会社と下請け会社の関係もまた家族の延長線上に築かれている。もとをいえば、一つの企業体になるべきものが細かい部分に分割され、それぞれのあいだにショック・アブソーバーを入れて、ショックを吸収する構造になっているのである。
こうした柔構造の生産構造は他国にあまり類例を見ない。アメリカの自動車メー力ーにも出入りのパーツ・メーカーはある。しかし、これらのメー力ーは一社だけに専属していることは少なく、資本関係もそれぞれ独立しているから、他社に売り込みのチャソスがあれば、どこのメー力ーをお客にすることもできる。どちらかと言えば、
何社にもまたがって納入しているほうが業績が安定するから、ライバル会社にも平気で商談をもちかける。日本のように、一社に納入すれば他社に売ることを制限されたり、資本関係がなくとも貸借対照表の提出まで要求されたりすることはほとんどない。
ところが、日本の大メー力ーはどこの会社も系列化に異常な情熱を燃やす。自社の仕事だけを専属にこなす子会社と、特に目をかけているおメカケ会社と、外様会社を完全に分類しており、それぞれの扱い方も違っている。外様とは他人行儀のつきあいをする。子会社は養わなければならないから、外注の仕事が減っても、仕送りに相当する部分は絶対に減らさない。その代り余計な仕送りにあたる部分はすべて力ットするから、一年の決算をしてみると、あまり利益は残してもらえない。おメカケ会社はこちらが色気を示しても、なかなかいうことを聞いてくれないので、惚れたような、惚れないような素振りをして時にはたくさんのお手当て奮発するかと思えば、時には袖にするようなこともしてみる。しかし、それはお互いさまだから、とにかく駆け引きが多く、やたらと手問のかかる相手である。
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