中国民俗研究家・上田尾一憲が語る、中国民俗の魅力

第34回
亀を使いこなせない人。

非常に徳が高く、
皆に認められているような人物でないと
亀を使いこなす事ができないと
前回説明いたしましたが、
それを裏付けるエピソードが
同じ亀策列伝の文中にあります。

長江のほとりで亀を飼って
ほそぼそと暮らしている者がいました。
しかし飼っていた亀の中に名亀と呼ばれる
それはりっぱな亀がおり、
その亀を飼っていたお陰で、
その者の家は裕福になっていきました。

その者はもう裕福になったから
もう亀を飼うこともしなくていいだろうと思い
その名亀を放してやろうとしたのですが
友人はその亀を放すとお前は破産するから
殺してしまえと言われ迷っていました。
そして、ある夜、夢の中にその亀が現れ、
殺さないで欲しいと言ったのですが、
亀飼いはとうとうその亀を殺してしまいました。
その後間もなく亀を殺した亀飼いは死に
その家も不幸が続いたとの事です。
元王は亀を殺し使用して成功を収めたのですが
亀飼は亀を殺して死んでしまいました。
亀策列伝の中には
亀を殺して使用できるのは徳のある王だけであり、
平民が亀を殺して使用することはできないと記されています。
そこでは誰もが神聖な亀を利用できるのではなく
徳のある王だけが使用できるという事で
亀をより貴重な物としているのです。

大昔、甲骨文字を使い始めたと同じくらいに
その貴重な物である亀の腹部側の甲羅を使って
占いをする「亀卜」が非常に重視されました。
火のついた棒でその甲羅を焼き
その割れ具合によって占うのです。
亀卜は殷周時代より盛んになり
軍事、農業、天気、病気、吉凶など
その当時、重大な事を占い、
その時代にすでに文字が存在した中国では
占いの結果を甲羅などに書き記していきました。
しかし日本で亀卜が行われ始めたときには
まだ、文字がなく、占う内容、結果は
言葉で伝えていたので、何を占いその結果が
どうだったのかという物は残っていません。

 


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