第18回
祖父との思い出−「漁」
農民画には
金山農民画と戸県農民画の他にも
北は吉林省東豊県の農民画や
南は広東省南東部にある龍門農民画、
それに東の江蘇省県の県農民画など、
中国全土にその地域独特の農民画が存在しています。
細かく調べてみると、
中国全土には大小合わせて約60個所に
農民画の郷と呼ばれている場所があるといわれています。
それら地域で描かれた農民画は
その土地土地によって習慣、文化が違うので
農民画の雰囲気も違ってきます。
特に、農民画でよく画かれている農作物や家畜も
場所によって全然ちがうので、画を見ただけで
だいたいどの地域で画かれた農民画なのかわかってきます。
例えば、青海省の農民画になると
ヤクが画かれていたり
上海郊外の金山では
上海ガニが画かれていたりします。
上海ガニやヤクの例はちょっと特別ですが、
戸県のある陜西省あたりでとれる農作物といえば、
高粱、麦、トウモロコシなどであり、
上海郊外の金山では水に恵まれているので
稲や魚などを画いた農民画が多い事がわかります。
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張美玲 「漁」
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この画は上海金山農民画
張美玲さんの「漁」です。
彼女は小さいころお祖父さんにつれられて
魚を獲りに行く事が大好きだったそうで、
網を上げたら魚がいっぱい獲れて
うれしくてうれしくてたまらなかったと
笑顔いっぱいで説明してくれました。
その時の様子を農民画で画いてみたのだそうです。
この画は彼女と
今は亡きお祖父さんとの思い出の画でもあり、
彼女の一番好きな画でもあります。
話終わったあとの彼女の目にはうっすらと
涙が浮かんでいました。
思い出のいっぱい詰まった心温まる作品です。
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