第667回
ひょっとして好き嫌いがひどいのは・・・
物事を考える時、その判断の基準というのは、
自分を基準にすることが普通だと思うのです。
この普通というのが間違いの本になる可能性もあります。
妹尾河童さんの著書に文芸春秋から出ている、
河童のスケッチブックという本があります。
その中にピエンローの作り方という項目があります。
図解入りで、作り方が微に入り細に入るように書いてあり、
その通り作るととても美味しく、
失敗などありえないと思うほどなんど作っても、おいしいのです。
今は春なので、これを作ることはあまりすすめません。
というのは、白菜が美味しい季節でないと
うまくできないからです。
この本を読んでから、青森で仕事をしていた頃、
毎年冬の白菜が美味しい季節になると、
この作り方を皆さんに教えていました。
多くの人達に教えたのですが、
作ってとても美味しかったという人はあまりいませんでした。
まわりの身近な人に聞いても、
いい返事は返ってこないことが多かったのです。
その時は、あまり気にも留めませんでした。
自分の家族でも作り手が違うと微妙に味が違いますが、
それは誤差範囲だと思っていたのです。
ところがあることがきっかけになり、
味の感覚にも人により大変な差があることがわかったのです。
全く同じ材料とその作り方を書いたものを与えても
同じものができることは、まずあり得ないのです。
味の世界でも、その他の世界でも、ピンからキリまである。
そのピンからキリまで、
どのぐらいの範囲があるかという範囲の広さの考え方で
その人の持っているものが推し量れるというのも
面白い発見でした。
というような事を考えていて、
もしあなたが食べ物の好き嫌いが非常にひどい、というのなら、
とても敏感な舌の感覚、感度を持っているかもしれない
と思ってもいいと思います。
今まであなたのまわりの人達があまりにも鈍感な舌の持ち主で、
あなたに本当に美味しいものを
与えてこなかった可能性があるのです。
なんでも美味しいという人とは
絶対つき合えないなと思っているあなた、
ミシュランの三つ星、なにこれ?と思っている
好き嫌いのひどいあなた、可能性はあります。
浜松町のすし処、「宮葉」に行ってご覧。
本当は、好き嫌いがひどいのでなく、
まずいものを食べていただけだったのだ
とわかる人がいると思います。
自分はとても敏感な舌の持ち主だったのだと認識するはずです。
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