第949回
昔の名前で流行っているだけ、燕楽 1
一度名店と評判になったら未来永劫客が入り続けるのが、
料理自体のレシピがまったく変わらない
単品専門店の強みでしょうか。
鰻屋でいうと尾花に野田岩、
蕎麦屋では室町砂場に神田やぶ蕎麦、
そしてトンカツではすぎ田にこの「燕楽」が当てはまります。
昔から評判がいいという先入観を持たなければ、
他店より優れているとは思えないこれらの店は、
誰が最初に言い出したのか
「おいしい名店」との太鼓判で今尚繁盛しています。
何代か代替わりしているこれらの店がなぜ繁盛し続け、
シェフが変わって
今まで実質料理を造っていたスーシェフがシェフに昇格したとたん
人気がなくなるフレンチやイタリアンが多いのか。
鮨も近いと思うのですが、蕎麦、鰻、トンカツは
素材の良し悪しで味の評価がほとんど決まってしまう
「ワンパターン料理」です。
「創業以来の秘伝のタレ」なるうたい文句の鰻屋もありますが、
物理的には中身はまったく更新されてしまっていると
昔読者の方からお教えいただきました。
良い蕎麦粉を仕入れて打つ、よい鰻を仕入れて捌いて焼く、
良い豚肉を仕入れて揚げる。
つゆ出汁やタレなどに店の違いが出るでしょうが、
何種類もあるものではありません。
(夏季と冬季でつゆ出汁の配合を変える蕎麦屋はあるようですけど)
打つ技術、揚げる技術、捌いて焼く技術に
それほどの修業歴が必要だとはどうしても思えないのです。
今後も何十年レシピを変えず、
同じ料理を黙々と造り続けるだけで客が勝手に来るのですから、
楽な商売といえます。
料理を同じレベルで造り続けるのは至難の業
とのご意見もあるでしょう。
しかし、それは質の高い、傑出した料理に当てはまることでして、
前述の店で出る料理のレベルを保つのが至難の技とは思えません。
さて「燕楽」は、新橋駅から徒歩で15分、
昼時は開店時刻から満席の繁盛店でありまが、
来栖王様も絶賛の
ロースカツやヒレカツ(単品1700円)を食べている人は少なく、
ほとんどの客が真っ黒になった油で素早く、
そして余熱で仕上げに火を通す事もせず直ぐ皿に盛って供する
千円前後のトンカツを食べている現実。
疲労した油に次から次へと大量に投げ入れて、
高温・短時間で揚げるトンカツが
そんなに美味しいわけがありません。
<明日につづく>
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