第917回
「廉価な食材を使用しろ」なんて言うな!
「大人の週末3月号」のマスヒロさんの食べ歩き手帳を読んで、
やはりこの人は経営というものがわかっていない人だと
確信しました。
経営センスがない人が、飲食店プロデュースをしているのですから、
彼が関わって成功した例がないと言われるのは当たり前です。
最近は銀座へ出て行く機会が多いので、彼のプロデュース店、
「リョウリ ゲンテン」をチェックしているのですが、
見た目も可哀想なくらいです。
たまに、テーブルを横一列にして
男性ばかりの貸切みたいなのを見ますが、
それ以外は半分も客が入っていないからです。
話が横にそれましたが、
「メイド イン ジャパン」というブログで、
硬派な書評や世評、そして限られた鮨屋の
ヨイショ訪問記を書いている方がいらっしゃいます。
なんでも「結構」を連発して、
どの店も同じ記述で面白みがまったくないものですが、
訪問回数が無茶苦茶多いようで、
その回数だけに注目して評価を信じる
「純粋な読者」も多い人気コラムであります。
その彼が珍しく最近開拓した和食屋が「新橋 笹田」。
梅谷ライターや
オールアバウトを辞めさせられた伊藤章良氏も絶賛の
京味出身の主人と奥さんの小さなお店です。
客単価1万円超のコース和食で、
出身の京味とはまったく使用食材が異なりますが、
今時点では真面目に手をかけた料理で悪くはありません。
評判がたってくると、おもむろに出かけて料理人に一発かまして、
自分の存在感を見せ付けたがるマスヒロさん。
セイコ蟹、クモコなどの食材で堪能されたようですが、
冬の献立は白子や魚卵の珍味の類のオンパレードになりやすく、
「こういう珍味に頼らない冬の献立を笹田さんに期待したい」
とアドヴァイスした事を誌面で自慢していました。
またまた、「サカキ」で
トリュフやフォアグラなど高給食材を使うなとのでしゃばりの再現。
今の時代、ただうまいものを造っているだけでは駄目、
その人ならではの料理でなくては、とのことですが、
美味しくない料理でも
オリジナリティがあれば良いというのでしょうか。
まずは、美味しいということが必要条件、
そこへ充分条件として
オリジナリティが加わるのが正論だと考えます。
しかし彼にこの「必要充分条件」が理解できるかどうか。
そんなつまらない考えだから、
食材も味もパッとしない、
立地の妙だけで人気が出た料理人を勘違いさせて、
角館から銀座へ引っ張り出してしまう暴挙をしてしまうのです。
「エルブジ」の模倣でしょうが、
確かに和食としてはオリジナリティがある「ゲンテン」。
しかし、誰もその手法に続かないのは、
そんな事をしても「美味しい和食」はできない事を
知っているからです。
しかもマスヒロさんのアドヴァイスは経営的にも間違い。
この手の店は1回転営業が基本で、それを予想して客単価を決め、
利益を考えて食材を選択しております。
一度客単価を1万円以上に設定した店が、
冬の珍味など値の張る食材をやめて、
奇を衒った調理法だけで
同じ客単価で集客できると思っているのでしょうか。
客単価を下げることは営業計画の大きな変更ですからそれも難しい。
そんなことは、
「ゲンテン」の不振でわかりきっていると思っていましたが、
マスヒロさんの持っている辞書には、
「反省」と「自己分析」といった文言が載っていないようです。
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