第858回
奇を衒っただけのただの揚げ物、キムカツ 1
ネーミングの勝利でしょうか、
恵比寿駅から徒歩数分の「キムカツ」は
四六時中行列が出来る人気店となり、
分店が各地に増殖中であります。
誰でも「キムタク」を連想してしまう覚えやすい店名、
商標登録しているようですが、味が、質がいいというのではなく、
ただ変わったミルフィーユ風のカツを
大量生産的に供するだけと言う営業戦略なのですが、
それが当たりました。
11:30のオープン15分前でも既に行列が出来ています。
アパートの1階にいくつかの長屋式の飲食店をはめ込んだその中で
この店は一人勝ち。
交詢ビルの「かつぜん」のように客の居ない店に入るのも何ですが、
流行りすぎの店に行列までして入るほど、
トンカツ自体が凄い料理なのでしょうか。
キャパは思ったより大きくありません。
カウンターは8席、他にテーブルが3卓ほどしかありませんから、
先に人気が先行すると行列が出来るのは当たり前の
小さなキャパな店です。
そして日本人の習性(私もそうですが)である
ミーハー精神をくすぐり、行列が行列を呼ぶ結果となるわけです。
予約が困難な人気店にする一番のコツは、大箱にしないことです。
無理してでも、キャパを抑える、
もしくは店を満杯にしないで予約を断ることをすれば、
一般客の飢餓感を煽って人気店になる可能性が高まります。
同じシェフがやっていたのに、
「アロマクラシコ」と今の「アロマフレスカ」の
予約の入り具合の違いがそれを証明しています。
「アロマクラシコ」のキャパは100名近く。
料理は悪くないと言うか、
私は今の「アロマフレスコ」より印象的で好きでありますが、
いかんせん大箱戦略が間違いだったわけです。
反省したのでしょう、
「カーサ ヴィニタリア」と共に、席数をかなり絞ってきました。
「キムカツ」へはじめて入店したとき、
予想はしていましたが、
カウンターから
そのトンカツに期待できそうにない光景を目撃しました。
バイト丸出しの不慣れな女性スタッフが、
セントラルキッチンで
あらかじめ造り置きしたミルフィーユ状のトンカツを袋から出し、
トッピングのチーズや胡椒などを塗りこんで、
業務用の「共栄フード社」のパン粉をビニール袋から取り出して、
卵と共に衣着け作業をしています。
揚げ手もバイト風のようでして、
タイマーで8分半、厚揚げは13分と店長らしき人の指示通り、
機械的に油から取り上げている光景は、
多店舗展開のダイニング形式と同じもの。
他の有名トンカツ屋に見られる、
「職人」、「熟練」、「拘り」がまったくありません。
<明日につづく>
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